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2013年5月

2013年5月28日 (火)

甲状腺患者から見えた原発事故--患者としての体験(19)

          原発事故から二年余経って

    先に、私は甲状腺患者であることを述べた。
このプロセスで知り得た疑問についても列挙した。
私がなぜこうした疑義に固執するかと言えば、今回の様々な事案が、どうもこの国の在り方と重なるからである。危機意識の欠如というか、隠蔽主義というか、上位下達というか……平時ならば、それも大目に見ることも可能だろう。しかし、こんな前代未聞の原発事故ということを前にしても、危機意識もなくその凝り固まった気質は何も動かない。(官僚たちは、お互いに責任をなすりつけあって、多くの事象に権限がないと言うのが口癖である。)

  原発事故後、会議録も残さなかった時の政府、SPEEDIも活用されず、避難民にさせなくてもいい被曝をさせた文部科学省。(マスコミは、多くを語らず追跡調査もなされなかった。)
初歩的ミスで生じた稲藁による牛肉の放射線汚染事件、下水場では目眩がする基準のセシーム汚泥が生じた。汚泥に混入したセメントは、もはや、どこの道路や建築物に使用されたかも特定されないまま拡散してしまった。

  2012年1月に入ると、放射線の高い浪江町の汚染ジャリが出荷され、マンションから高い放射線が検出され入居住民は転居を余儀なくされた。(そんなこと想定内のことなのに、その対応を取らなかった政府の危機感覚の欠如が目に付く。)
市町村においては、放射線モニタリングデーターも意図的な掲載がなかったとは言い切れない。いくら安全性について問い合わせをしても、何も動かなかった厚生労働省。原発事故でも、民間の事故調査委員会でその縦割り行政の弊害が鋭く指摘されたが、その弊害は、かく緊急事態に際しても柔軟性を欠いていた。その根は深く、もはや、弊害を越して病理に近いものになりつつある。
この間、放射線汚染マップは全国に広まった。
 

 国会事故調政府事故調民会事故調も一通りの結論は出していたが、では、その結論を得て、どうするかという行動基準は曖昧のままだ。人災と結論付けながら、誰も責任を取ったようには見られない。その名前さえ出てこない。
こんな前代未聞な原子力災害に会ったというのに、のうのうと既得権を維持している──政治家、知事、官僚、さらに自治体の役人達。原発事故当時の閣僚たちは、多くの被爆者、未来を担う子供たちを絶望的な状況に追い込んだというのに、誰一人責任も取らなかった。そして、堂々と国会議員として延命した。(一部の議員は、昨年12月の衆議院選挙で落選させられたが…。)

  曖昧なままこの国の特徴といえる予定調和の中に吸収されて、現実に今、放射線リスクが、どれ位なのかすら報道されない。福島県には戒厳令が敷かれていて、放射線に対して不安すら口にしにくい状況もあると聞く。
まさに、被曝者は被爆させられ損である。(やがて、見えない放射線値との闘いに疲れてくると、失望感は孤立感に変わり、やがて絶望感にも陥ってきて、死を選択する人々も出てくるのだろう。そこには、未来への絶望感もあるだろうが、こうした悲劇を創出した張本人の政府や企業が、責任を何一つ取らないまま、平然と既得権を行使している現実への絶望と抗議の気持ちも内包されていると私は思う。

  被爆者は棄民状態で放置され、じわじわと殺戮されているような感覚に近い未来を押しつけられているように見える。
廃炉は、いつまでかかるか分からない。未来にいつも暗雲が立ちはだかっている──未だ緊急事態を脱しているようには見えない原発事故……何より被曝者の心が、未だ傷ついている。傷を癒すには時間が掛かる。まだ傷ついているのに、周囲が明るい方ばかりを見ようとすると、傷ついた人達は疎外感を感じ、より孤立感を感じてしまうのではなかろうか。(マスコミも事故の経緯の検証などよりは、復興ばかり喧伝する傾向にある)

被曝者は救済されているか


  原発事故後2年二ヶ月余――この間、被爆者は然るべく保護されただろうか。心身共に傷ついているにもかかわらず、親身に国から、そして県から救済されているだろうか。

  震災後二年二ヶ月余を経て、被曝者に思いを馳せれば「福島県民健康管理調査」においてもその外堀はすでに埋められ、周辺を囲んでいる塀のレンガは益々高く積みあげられていくように思われる。一般的には、そんな塀はないことになっているし実態は見えない。
現実に、分かっていることは福島県がこの調査を実施し、国がこの調査に予算をつけたという事実である。しかし、その経緯は透明さを欠いている。
「健康管理調査」の回収率は23%にしか至っていなということ自体、被曝者から不審感と嫌悪感を突き付けられているようである。それにもかかわらず、「福島県民健康調査」は、今では既成事実化されてしまった。被曝者が被験者になることを拒否しているのに、調査は何ら変更なく続けられている。
疫学研究の倫理指針にはインフォームドコンセントという項もあり、被験者の人権を尊重するよう要請されている。にもかかわらず、第三者的機関による倫理委員会も開催されないまま「県民健康管理調査」は進行していった。

  
 
  何故、疫学調査が優先されるのかという素朴な疑問のキーワードは、研究者達である。特に、内分泌五学会員達の野望の前に砕かれる。「低線量被曝調査」の最後の機会として、彼らはそれを離さない。(私たち甲状腺患者の安全性を無視し、易易と経済に売り渡したケースと実に類似している。)
五学会の研究者達は、被曝者を被験者にするべく、一見では分かりにくい迷路を築きあげた。彼らだけが、分かる迷路である。
迷路になっている上、そこに科学の壁が築かれて密室状態になっているため、素人には実態が分かりにくい。そのシルエットから、塀の内側で構築されている世界を想像するしかない。それでも、そのプロセスにおいて、想像を超えた人脈と組織が蠢き、、疫学研究を優先している気配はする。

  もとより、我々素人には、放射線のことは分からない。その数値を並べられても実感できない。専門医や研究者が若干の論理矛盾を露呈したとしても、一般人は、それを砕ける基礎知識に欠けているから、最初から専門家の勝ちである。論理的に変だと思っても、その形はおぼろげな点線でしか証明しきれない。アルファ線もベータ線もガンマ線も、目に見えない。それぞれの違いを説明されても、実感的には理解できない。
ただ、嗅覚的に、関係者の一つひとつの動きが、己の権益に結びつけていることだけは、素人にも感じられる。本当は単純なことを、回りくどく複雑に見せることの背景には、何らかの企みがあると想定されるのだ。


■疫学研究受付番号1319番

  日を重ねるにつけ、不透明に高くなっていく塀の中では、関係学会ならびに関係官庁は三つ巴になり、被爆者を被験者に仕立てる完璧な体制を整えてしまった。
現実に、2011年12月13日には、福島県立医科大学倫理委員会では、受付番号1319番としてナンバーリングし、「県民健康管理調査の一環としての福島県居住者に対する健康診査研究」は研究等種別として「疫学研究」と位置付けられ承認されている。
「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難地区住民等の健康管理のための質問紙調査」すら「疫学研究」として承認されている。この受付番号は1316番である。(そして、その研究と医療責任者は、両研究とも阿部正文福島県立医科大学副学長である。阿部氏今年3月1日山下氏に変わり県民健康管理センター長になった。)

  阿部氏県民健康管理センター長と疫学調査の責任者というポジションにいるのである。しかも、福島県立医科大学の副学長でもある。
さらには、客観性を要求されるはずの倫理委員会は、当福島県立医科大学で実施された。倫理指針があるにもかかわらず、そのことに異論を挟む団体も人物も出てこないようである。(全日本民医連が、問題提議として倫理委員会の内容公開を要請する文書を2011年9月16日出してはいる。しかし、それが実現されていないようである。福島県の医師会も国の管理を求め、せめて福島県外の被曝者だけでも、国の管理にしてほしい旨要請していたが、そうはならなかった。)だったら、倫理指針とは、何のためにあるのだろうか……もとより、研究対象者の人権のためにあるのだろう。しかし、それが平然と無視されている現状がある。

 つまり、「県民健康管理調査」とし県民の聞き取りというアプローチを取りながら、福島県立医科大学内部では「疫学」調査が決定承認されていたのだった。(既に一年五ヶ月以上も前に承認されてしまっている。)
一方で倫理指針五条において、研究対象者の個人の尊厳及び人権を尊重して実施しなければならないとしている。研究対象者は、事前に疫学研究の十分な説明を受ける権利を保証している。にもかかわらず、先の最初の書き込み調査はペンを持って書き込み始めた時から、すでに、福島県立医科大学倫理委員会では「疫学研究」として種別されスタートしているのだ。
福島県立医科大学の責任者阿部氏は、被曝者にその同意と了解を細やかに得たのだろうか。すでに承認されてしまった「疫学研究」に対し、福島県民が拒否しにくい状況が人為的に作られてしまっていないだろうか。
被曝者は被曝し、その不安を生涯背負った被害者であるにも拘らず、かく己の被曝を「調査」として、すでに人質に取られてしまっていると言える。

 それから八ヶ月後、民主党政権の折、2012年8月30日第四回福島県立医科大学で行われた環境省「原子力被災者等の健康についてのコミュニケーションにかかる有識者懇談会」において、福島県立医科大学副学長阿部正文氏は、福島県立医科大学の壮大な未来構想を披露していた。(阿部氏は先に述べた「疫学調査」の責任者である。この研究責任者という権限は、平成14年6月17日「疫学研究に対する倫理指針」によれば、結構守備範囲が広い。その権限は研究の開示、内容の訂正、削除、消去までにもあるようである。ちなみに、この阿部氏の研究分野は人体病理学で、悪性リンパ腫の病因、病態に関する研究をしている。社団法人病理学会評議員をしている。福島県立医科大学の生え抜きである。)

 福島県立医科大学を中心として、その背後には、学会及び製薬会社が暗躍し、癌の創薬を開発する放射線医学の国際拠点を作るべく画策している。インターネット上では、それは最初噂であった。私も半信半疑であった。し
かし、それは現実となった。県は、復興事業として大プロジェクトを立ち上げ、その裏付けとして、多額な税金が国から投入された。
「疫学研究」と既に一方的に決定した「県民健康管理調査」を核に、ガンの創薬ビジネスを成功させるべく、官民一体で目が点になっている。

 第一回福島県復興ビジョン検討委員会というのは、原発事故直後2ヶ月余の2011年5月13日には開催されている。
そこには、福島県立医科大も参加している。参加したのは横山斎附属病院副院長である。(横山氏の専門は心臓血管科学だが、研究者番号も持ち、独立法人日本学術振興会の科学研究費助成事業から助成を受けている。)
復興ビジョン検討委員会を主催しているのは財団法人国土技術研究センターである。そして、このセンターは国土交通省が主管である。かく復興ビジョン計画は、原発事故後、2ヶ月で立ち上がった。
その後、厚生労働省及び文部科学省まで絡み、福島県立医科大の「福島県民健康管理調査」の構想を宝箱のように抱え込むのである。

 現在では、環境省「福島県民健康管理調査」は組み込まれ、環境保険部の放射線健康管理対策参事官なる官僚が担当しているようである。
私は今年4月3日 福島県立医科大学の「疫学研究」のナンバリングが今でも生きているのか、確認を取るため電話をした。
回答は「調査を始めるに当たって、福島県立医科大倫理委員会で決めたのだろう。」とのことだった。(この経緯の詳細は、すでに書いた。)しかし、調査は、すでに8月から始まっている。倫理委員会12月13日開催なので、この回答は見当外れな回答である。「この番号で、疫学研究は確かか」と私は再度確認したが、そうだとも違うとも言わないまま、参事官Y氏は「自分は回答はした。会議があるから。」と一方的に電話を切った。
ということは、この番号で進んでいるようである。 もはや、すべてのことは、誰がどう反対しようと、動かしようもなく決定されてしまっている。
被曝者には放射線の影響はないと言いつつ、福島県医科大学では最新のがん検診の機材が設置されていく。国際的ガンセンターのハブ構想は、絶対的なものなのだ。

福島医大の放射線医療新センターが発足


  2012/11/18の報道によれば、福島医大の放射線医療新センターは20日に発足すると言う。放射線医療や県民健康管理調査の拠点とする新センターの名称が「ふくしま国際医療科学センター」に決まり、20日に発足する。
センターの一部となる新病棟などの施設は平成25年度着工、27年度中の完成、運用開始を目指している。センター本部は福島医大の管理棟に設置し、「県民健康管理センター」「先端医療臨床研究支援センター」「先端診療部門」「医療産業リエゾン支援センター」「教育人材育成部門」5つの機能を設ける。
先端診療部門の新病棟は、約2万平方メートル、6~7階建てとする予定で、
最先端の早期診断、早期治療を実現し、子どもと周産期の医療、災害医療や救命救急、がん診療の態勢を整える。費用は約140億円。その他の機能が入る施設については、約350億円以上の事業規模で調整しているとのことである。

 すべては予定通り決定してしまった。福島医大が、原発事故当初からインターネット上で予見されていた国際的ガンセンターのハブ拠点になるという構想は具現化した。
「県民健康管理調査」を核として、ここで20万人の疫学研究が始められる訳である。
このことは、もはや絶対的事実であり、医大に500億近くの国民の税金が使われるというのに、検討会議のスタッフ達は、まだ被曝者に放射線の影響はないなどと言い続けるのだろうか。
山下氏を筆頭に五団体が、緊急輸入において、私たち甲状腺患者に「供給」というキーワードで「安全性」を無視した。同様に「被曝」という不安種を人質に、被曝者の人格と尊厳に十分な配慮もないまま、言わばなし崩し的に被曝者を「疫学研究」の枠に閉じ込めようとしていることは隠しようもない。
 
 山下氏長崎大学に戻ったものの、福島医科大の副学長も非常勤で兼任するそうである。今年4月2日長崎大学でのインタビューで記者会見をした山下氏は、今後も長期的に福島の住民の健康管理にあたることが重要だとした上で、「低線量の放射線被ばくの影響を究明することは長崎や広島がやるべき大きなテーマで、人材の育成を含めて福島と協力して必要があり、今後も福島に寄り添う覚悟だ」と述べた旨報道されている。(NHK長崎 4月3日)
福島に寄り添う? どこまでも、福島を離さない……山下氏の低線量被曝の「疫学研究」に賭ける執念は凄まじいものがある。 (なにせ、これから国際的「疫学研究」で゛金字塔を立てなければならないのだから…。)

  どうやら「福島県民健康管理調査」が「疫学研究」であることに何ら変更もなさそうである。その証拠に、福島県議会でも「県民健康調査」の件は議論されている本田福島県議員の発言でも「これだけの多くの人が低放射線被曝をするケースは人類史上例がなく、この県民健康管理調査のデーターの取扱いには最大限の配慮が求められます。既に海外の大手製薬会社が産業スパイを使ってでもこれらのデーターの入手を試みてくるのではないかと、一部専門家からの指摘もございます。」として「県民健康管理調査」のデーターベースのセキュリティーは強固なものとすべきとして、県に問いかけている。
この問に対し県保健福祉部長は「県民健康管理調査のデーターにつきましては、県民一人一人の健康診査等の膨大な記録を長期にわたって蓄積していくことから、個人情報の保護が極めて重要であると考えております。そのため、専用サーバーによる独立したデータベースとして管理し、外部からの不正アクセスを防止するなど高いセキュリティーを確保するとともに、内部におけるデータベースの取扱いについても、操作可能場所の指定や操作資格者の限り、操作状況や結果の記録、確認など厳格な運用に取り組んでいるところであり今後ともデーターの管理に万全を期してまいる考えであります。」と回答している。
 

データーは誰のもの?

  データー管理は大切である。しかし、そもそも、このデーターは誰のものか? もはや、福島県の所有物であるかのように、それを前提として論議している。
しかし、データーは福島県のものでもなく、福島県立医科大学のものでもなかろう。にもかかわらず、県議会でもこの県民データーが論議され、この様子からすれば、海外からの産業スパイがいるからと福島県立医大も福島県もデーターを囲い込み、海外はおろか国内にすら公開する気などなさそうである。(IAEAとは調査協力はしたようだが……。)
質問書からしてすでに「疫学研究」としてスタートしているのだから、不本意に被曝させられた被曝者の事情も心理も汲み取っているようには伺えない。
実に、冷たい調査に見える。すなわち、ペンを持ちアンケートに書き込み始めた時点から「疫学研究」は始まるのである。被曝事態が不本意なのに、あらかじめ「疫学研究」と種別化されている書類に記述等するのも怒りに震えることだろう。(そのことを被曝者は知っているのか、回収率は23%だという。)

  現状ではインフォームドコンセントなんて、絵に書いた餅である。被曝者に人権も尊厳も考慮されているようには見えない。
車の事故に巻き込まれたら、どんなに軽症でも、加害者は補償しなければならない。これに従えば、なぜ原発事故に巻き込まれているにもかかわらず、それを、誰も賠償しないのか? ほんの少しの放射線被害だってリスクを与えたこと、すなわち、現実に被爆させ精神的に苦痛を与えたことに対して、補償はされないのは変ではないか。(どうして、こんな初歩的論理が、こと、原発事故だけは適応できないのか分からないのである。)
福島第一原発事故において、被曝者は、何の責任もない被害者である。これが事故である以上、被曝者は救済されなければならないし、今後の晩発性健康被害に備え、医療受診の無料化位あたりまえではなかろうか。 

  今のままでは「健康管理調査」が明らかに無料診療の人質になっている。被曝者は、失望の余り、諦めて声すら出せない状況にいると推測する。まして、子供たちは何も訴えることすらできない。(大人たちを信じていたのに、日本の大人たちはヨード剤すら的確に与えなかった。それだけで、被爆した子供たちは、日本の大人たちに「自分の未来を返して!」と要求できるはずだろう。)  

  甲状腺患者も同様だ。エネルギーが欠如しているし、孤立して存在しているから団結もしにくい。ゆえに、不当扱いされても声も上げられない。(緊急輸入の時点で、あすか製薬の製剤に不安を感じても声を上げる現象が起きなかったのは、もしかしたら、患者たちは、既に供給不足に走る学会や製薬会社に洗脳されていたのではないか……とすら思えてしまう。
あるいは、供給不安の嵐の前に、正当な論理すら喪わされている傾向にあったかもしれない。いや、もっと単純に考えれば、患者たちは、国が的確な対応を取ってくれると信じていたのかもしれない。国は、透明な形で的確な緊急輸入をしてくれる能力があると思っていただろう。私も、どこかでそう思っていた。日本政府並びに厚生労働省が、こんなにも無作為であったとは考えていなかった。)
あるいは、こうも考えられる。すなわち、患者たちは昔から自分たちの意見等が吸収された経験などなかったゆえ、その無力感に慣らされすぎたため、最初から諦めてしまっていたのかもしれない。

  そして、両ケースとも共通することは、取り仕切ったキーパースンは日本甲状腺学会理事長の山下俊一氏だったということである。
様々な矛盾とミスを自ら作っておいて、権力者は、患者や被曝者を強引に屈服させる。それは、研究者も同様で、ある一定の条件が整うと、かくある人々の人権や尊厳を平然と無視し、己の栄達のために邁進できる材料としか見えなくなってしまうのだろうか

  平時にはそれが見えにくい。しかし、非常時には、弱い者は遺棄され踏み越えられてきた存在でしかなかったことは、歴史が証明している。
今、現実に起こっていることは戦争と同じだ。国家が個人をねじ伏せている。そして、国家は真実を隠蔽したまま、そのことに居直っている。
被曝してしまった民は仕方ない。あとは、この山積みの被曝データーを囲い込み、国際的金字塔を建てるべく官民一体で事業推進しよう。彼らの意図を辿れば、そんなことに集約されるのだろうか。(門外不出の貴重なデーターの方が、人の命より重いとでも言うのだろうか。)


厚生労働委員会調査室杉本綾子著「立法と調査」

  こんな中、今年5月24日国連人権委員会から「福島県民健康管理調査」に対して七項目の勧告が出された。(すると、これを打ち消すかのように国連科学委員会が、100ミリシーベルトまで至らないから健康被害は考えられない。とするコメントを発表した。それを朝日新聞が一面に掲載した。そういえば、山下氏は、朝日ガン賞を受賞していたのを私は思い出した。この考えは山下氏の主張そっくりではないか……両者は、そういう深い関係にあったのかと……。まさに、この原発事故に対する立ち位置の踏み絵となっている。)
それにつき、詳細をインターネットで検索している時、ある文章を発見した。

  参議院事務局企画調整室編集発行
「立法と調査」という文書である。2011年10月NO321号となっている。厚生労働委員会調査室の杉山綾子なる人物の書いた調査書だが、ここで、この「健康管理調査」について触れている。(60P~161Pに記載されている。)
一部抜粋しよう。
「福島県は復興ビジョンの中で、この長期にわたる健康管理調査を通して健康の保持・増進を一体的に実施するプログラムを構築することを提言している。併せて福島県立医科大での放射線医学に関する研究や診療機能の強化、放射線健康障害の早期診断・最先端治療拠点の創設等も盛り込んでいる。国には、こうした県の取組をバックアップするための予 算措置や法整備の検討が求められよう。」さらに続いて「この健康管理調査は世界で初めての低線量放射線の健康影響に関する大規模な疫学調査となり、注目度も高い。そのため、一部からはデータを収集することが主目的で健康管理は二の次なのではないかといった批判も聞かれる。調査を行うに当たっては、個人情報の取扱いに慎重を期することは言うまでもなく、県民感情に配慮し、納得を得ながら進められるべきである。」

  この調査書が発行されたのは2011年10月である。その後、同年12月13日に福島県立医科大学による倫理委員会が開かれ「疫学調査」として承認されている
この文書の存在を私は知らなかった。もはや、参議院調査室では、堂々と「低線量放射線の健康影響に関する大規模な疫学調査」と言及している。そして「注目度も高い」とまで言い切っている。
とすれば、これは誰が決定したことか……倫理委員会を開く前に、疫学調査が先行している。国は県がすることを認め予算を計上する訳だから、福島県が決定した訳だろうか。倫理委員会は事前に被験者の人権に配慮するようインフォームドコンセントの推奨する「疫学研究の倫理指針」が存在しながら、そんなもの完璧に無視している言い方に唖然とする。(この国では、倫理指針は作成するだけで運用しないことが決まっているのだろうか。決定は、皆上部で上位下達式に決めてしまうのだ。被曝者の人権等全く無視したまま……。)

  決定したのは県の佐藤知事……そして、この調査の中核となっているのは、日本甲状腺学会理事長の山下俊一氏で、その背景に五学会が控えているのだろう
知事は国から予算を獲得するため、そして、山下氏は「低線量放射線の健康影響に関する国際的疫学調査」の実現のためだ。さらに、このデーターを基に、福島県立医科大を中心として背後には製薬会社が暗躍し癌の創薬を開発する。そして、県は復興事業として放射線医学の国際的拠点とすべく計画している。(いつでも被害者である被曝者は、蚊帳の外に置かれたままだ。)
私たち甲状腺患者の安全性をないがしろにされた。
経済のためあすか製薬の既得権を維持させた緊急輸入の時と同じ背景がここにもある。公のこと等、全く考えていない。頭の中にあるのは己の利権と野望のことだけだ。

  ちなみに、「政府は平成23年度第二次補正予算に962 億円を計上し、原子力被災者・子ども健康基金を設置した。」ということもこの調査書に記述されている。「そのうち782 億円を健康管理・調査事業として福島県へ交付することとしている。」とも書いてある。2011年に、つまり、時の政府管内閣が決定してしまったことが分かった
この後、誰がどう反対しようが、放射線不安の解消や将来にわたる県民の健康管理を目的とするという大義名分を装いながら、「被曝者」を「被験者」に仕てる計画は、五学会の野望と、既得権者の利益と、管政権の情報隠蔽のためのために水面下で決定されてしまった事項であったようである。

  当時の政府は、この原発事故の対応において、子供たちにヨード剤も配布できなかった当事者達なのである。自らの無策を国民の血税で補い、自らは何も傷つかないまま平然と国会に戻ってきている。
こんなに不透明な事実を突きつけられている国民は、このことに抗議もできない。また、抗議したところで、既成事実は何も変えられないのだ。

  秘密会議まで報道された「検討会議」も、11回目を迎え、今回、委員が大幅に入れ替えられ、座長は福島医師会常任理事の星 北斗氏がなった。しかし、委員には五学会の一角日本甲状腺外科理事長である清水一雄氏が入っているし、福島リスク管理アドバイザーであり長崎大学の高村 昇氏も布石のように配置されている。(ちゃんと、山下俊一氏の影が反映されているように見える。)

  実施機関は福島県立医科大学で何も変わらないまま、その責任者は日本内分泌外科学会の鈴木眞一氏が取り仕切っている。
繰り返しになるが、日本甲状腺外科日本内分泌外科学会は、役員も機関紙も共有するような双子のような学会である。検討委員会側にも実施機関側にも内分泌外科系理事長二人が配置された。
さらに、清水氏鈴木氏日本甲状腺学会の理事と監事である。そして、この学会の理事長は、山下氏である。
外科系学会の理事長を両機関に配置することで、まさにガン対応のシフト配置がされたように見えるのは偶然だろうか。五学会のうち、外科系理事長二人が配置されたその背後には、日本甲状腺学科理事長が控えている。繰り返しになるが、山下俊一氏は社団法人日本内分泌学会の理事でもある。小児のことは、厚生労働省管轄の国立生育医療センターの横谷進小児内分泌学会理事長が控えている。
委員のメンバーも福島医科大りメンバーが大幅に入れ替わりシャフルされたかのように一見は見える。が、その実、五学会がきちんと手綱を握り、その中心位置に、山下俊一氏が要として存在している。

  事実、Our Planet TVのネット上には「マネジメント会議記録」なるものが掲載されている。この2012年6月12日第八回「マネジメント会議」記録には、驚くべき記録が残っている。阿部理事の発言「学長・副学長会議において、山下先生から提言があった。メンタルヘルスケアは政府で評価が高く、更に進めてほしいということ、また、甲状腺検査はもっと早く進めてほしい」ということだった。(山下氏は、この時の政府の意向を受ける窓口になっていたのか。)
阿部理事は続ける。「政府の方針はメンタルケアーを大きな柱にしている。甲状腺検査は医師会との関係もあるが、早く拡大してほしい。甲状腺検査部門に外科部門と内科部門を作ったほうがよいのか、また医師会をどう巻き込むのかを鈴木教授と検討してほしい。」と。
この発言も山下氏の提言なのか? ここで、すでに医師会を巻き込むことのシナリオが提言されている。今回、福島県医師会の理事が座長になったことはもう一年も前から福島県立医科大においてシナリオ化されていたというのか。

また、副理事長の発言。「甲状腺検査の拡大については、全国医学部長病院長会議においてお願いしなければならないと考えている。また医師会の問題については、地域医療協議会を作って、そこに医師会にも入っていただくこととしたい。」
そして、この言葉通り、今回福島病院協会会長前原和平氏が検討委員会のメンバーとなった。全国医学部長病院長会議は十月に開催されたようだが、おそらく、ここで福島県立医科大のメンバーが協力を依頼したことが予測される。
振り返れば、全日本民医連が「福島県民健康調査」に問題提起をしていたにもかかわらず、2012年9月14日、全国病院協会の通達により「県外避難者福島県民健康管理調査」の参加を決めている。甲状腺検査の取り組み方としての参考資料として(日本甲状腺学会雑誌vol13No1p26)を掲載している。(それでも、全日本民医連は、患者の立場に最後まで寄り添うという立場に立つスタンスを崩すことはしていないようである。)
こうして、山下体制は基盤を微動さえしないよう固められていった。現実は運営は「福島県医科大」が、握っている。

  i全日本民医連も、その参考図書に日本甲状腺学会の雑誌を推奨している。その時はなぜ? と思ったが、6月26日第10回のマネジメント会議で、「学会のオーソライズ」ということが話し合われている。
そこで「学会のオーソライズとはどのようなことか。」という質問があると、副理事長「甲状腺学会が全面的なサポートをするということである。」と回答している。こうして、山下俊一理事長率いる日本甲状腺学会が、「福島県民健康調査」の理論的中核と権威を改めて握るのである。(この学会には、鈴木俊一氏、清水一雄氏、元内分泌学会理事長だった森 昌朋氏 小児委員長の理事原田正平氏等が役員を務めている。)

  かくして、福島県立医科大では、日本甲状腺学会のオーソライズによって調査をマニアル統一化し、疫学調査の枠からはずさないように医師たち、医療関係者を抱き込んだ。オールジャパンてなく、オール日本甲状腺学会が、被曝者を被験者にするためのありとあらゆる企みが、垣間見える。
福島県の子供たちの甲状腺超音波検査結果等、関係者以外にデーター開示等しそうもない。ましてや、海外の小児甲状腺の専門医等に知らせる気もなさそうだ。その目的は、あくまで「疫学調査」なのであり、日本甲状腺学会を始め関係五学会の面々だけが、36万人のデーターを握るのであろう。(県外に出た被曝者の調査の全国担当機関も、甲状腺で有名な病院が多い。全国に散らばった被爆者のデーターもマニアル化し、福島県立医大に戻し収集できるネットワーク作りが設定されてしまっている。ここでも、NPO法人乳腺甲状腺超音波診断、改め乳腺甲状腺超音波学会鈴木眞一氏が、そのコーディネイトに大活躍している模様だ。鈴木氏は福島県の社団法人日本超音波医学会の専門医でもある。この学会は昨年四百名もの大講習会を行なった。この業界は原発事故景気に沸き、大活況を呈している。)

  甲状腺のプロが診るのだから信頼できるではないかという論法も成立しそうだが、そもそも被曝者は、東電によって被曝させられた被害者なのである。
にもかかわらず、病院選択の自由もなく、被験者として扱われることを拒否する人権もないのである。それに従わないものは「自腹を切って自己負担をせよ」というのである。
先にも言ったように、原発事故という原因を作ったのは、国と東京電力である。事故というのは、原因を起こしたものが謝罪と償いをしなければならない。しかし、「健康被害の因果関係が放射線によるものかどうか定かでない」というのが、ずっと「福島県民健康調査」の検討会議スタッフの見解だった。
が、百歩譲って健康被害との因果関係がなかったとしても、原発事故が起こったこと、そして生活全てがそれに巻き込まれたことは事実である。その精神的被害は、なぜ補償されないのか。(しかも、子供の放射線の感受性は、大人よりずっと高いリスクがあるのだ。)
さらに、国家と東京電力がその責任を負う人災だというのならば、なぜ、その責任を問われるべき人間たちは裁かれないのか。(交通事故を起こせば、起訴位はされる。賠償も強要される。なぜ被害にあった被害者が、自ら医療費を支払わなければならないのか心底疑問だ。なぜ、被害者である被曝者が、加害者である国からそんな目に合わされるのか。そこには、我々甲状腺患者と同じ98%シェアの呪縛と同様の不本意さがある。)

 被曝者は「医療」と「救済」を求めているだろう
検査、治療の経過の結果として、後世の医学における研究資料になることは有り得るかもしれない。しかし、「疫学研究」が前提であり、「医療」が後というのでは、倫理指針に定められた被曝者の人権の尊重とは齟齬を起こす。
インフォームドコンセントが規定されながら、上位下達式に下りてくるような「福島県民調査」の実態は、とても、被曝者の人権を尊重しているように思えないのである。
  
 私たち甲状腺患者は、「供給」より製剤の「安全性」を求めていたはずだ。
(しかし、患者は体力も気力も健康人よりは少ない。しかも、孤立していて、その声を結集できにくい。さらに、甲状腺摘出手術を受け、さらなるリスクと戦っている患者達にとっては、供給不足と聞いただけで冷静さを失う傾向もあるかもしれない。彼らにとって、長年親しんだチラージンは、命を繋ぐ意味を持つ重要な薬に違いない。疾病の重症度が増すほど、供給の一点に関心を向けるよう強いられている現実もあるかもしれない。)
しかし、「チラージン98%シェア」というこの国の歪な医療体制こそ問題視すべきなのだ。そこを放置し、その体制を常態化させ患者の感性を鈍化させ、さらに、患者を不本意さに馴らし続けた……すなわち、そういう意味でT4製剤が、人質に取られていたという現実こそが問題なのである。
にもかかわらず、権力者の不本意さに慣らされ続けたこの国の人々は、患者を含めてNOという声を挙げることに慣れていない。
ゆえに、既得権益者は地位を追われることもなく、枕を高くして寝ていられる。 

 原発事故直後2011年3月15日に流れた一万ベクレルの放射線プルームによる埼玉県や首都圏でも放射線汚染のホットスポットが見つかっていたが、最近ではポツポツその影響も出てきているようだ。
インターネット上では、突然死とか不可解な死とかが話題になっているが、そんなこと、マスコミは黙して何一つ報道しない。

 チェルノブイリ現象が少しずつ具現化し人々の日常に近づき、首都圏の日常生活にも影を落としている。それでも、マスコミはそれに触れない。
真実が封印されている。
  
①あすか製薬の在庫品が、損傷し放射線プルームに晒された倉庫から取り出され出荷されてしまっても、誰もそれを気にもかけなかった。
学会関係官庁も販売を担う武田薬品工業も……さらには日本製薬団体連合会……国は98%シェアという歪な薬事行政を放置していたため、結果的に、損傷した倉庫から取り出された放射線が、若干であれ検出された製剤を全国に出荷することを許し、病院の窓口を通じて患者に処方された。

②薬の安全性すらも「製薬会社」の利益を代表するプロジェクトチームが協議し、机上論で取りまとめてしまったように推測される。 (放射線の数値をすべて掌握しきった訳でもなく、患者の安全性を第一に配慮することもなく、経済性を論拠に決定してしまったように見える。)
命を守る砦のはずの厚生労働省は、40日で海外に向かって日本のすべての製薬会社の安全性を宣言し、輸出促進のためのお墨付きを、「日本製薬工業協会」すなわち製薬協に渡した。安全性が、経済性にすり替えられた瞬間だった。
 
③いわき市は、雑草の驚くべき数値の文部科学省のデーターをホームページに掲載もせず、一番高い空間線量の検出された3月15日をカットして掲載し、要らぬ内部被爆を住民に強要した。 (いわき市民は、震災停電で混乱していた。それに原発が追い討ちをかけたと聞く。3月15日いわき市に一番放射線が降下した日は、多くの人々は、親族の安否確認や水の確保に追われていた。)

  重ねて言うが、その時、いわき市の合同庁舎の屋上で測定されているとされるモニタリングデーターは、3月16日12:30pm3,37μシーベルトという数値から始まっていた。それ以前の高いデーターはカットしていた。
雑草のデーターは3月18日放射線ヨウ素690000ベクレルから始まり、3月20日、548000ベクレルと続いた。セシウムも3月23日が最高で30300ベクレルあった。しかし、いわき市は、このデーターをホームページに決して公開しなかったし、今でさえ掲載されていない。
(当時、福島県にリンクを貼っていたということを原子力対策課の担当者T氏が主張していたので、今年5月再確認した結果、このリンクの一件も今となっては確認が取れないと回答された。すなわち、情報開示を要求したとしても、その情報がないという呆れ返った事態なのである。)

  この間、いわき市は農産物の安全性をアピールし、4月12日当時の官房長官枝野氏に試食させたパフォーマンス映像をテレビで全国に流し、4月22日には同市は安全宣言をし、高線量の志田名と萩を正式に屋内退避圏から外した。
あすか製薬
いわき市の測定を信じ、自社の安全宣言をした。それを日本甲状腺学会まで「あすか製薬は放射線の影響はない」と言っていると記載し、60万人の患者にあすか製薬のチラージンSの安全性を信じさせた。(こうして、いわき市の幻の安全宣言は、多くの人々に影響を与えた。なかには、しなくていい被爆をさせられた人もいるだろう。甲状腺患者60万人も、この幻の安全宣言に巻き込まれた。その元凶はいわき市にある真実のデーターを掲載しなかったからだ。こんなことをしていても、責任者も裁かれない。そうした法律がないからだそうだ。犯罪が、無邪気にまかり通っている。)

福島県自体も、原発事故後九月までの4521時間のモニタリングデーター半 年分のを未公開にしていた事が最近報道された。 (兄貴分の県がこんな調子なので、子分格のいわき市が、それをしていてエクスキューズされる。)

  ちなみに、福島県薬務課もいわき市の雑草のデーターを知らなかった。
今年3月26日 あすか製薬の倉庫について確認を取った時のことである。
690000ベクレル/kg.の放射線ヨウ素が雑草から検出されながら、そのデーターを知らず、あすか製薬のニュースリリースから放射線が検出されたことも知らないまま、製造許可を与えていた。修理に関しては書類の提出も必要ないとのこと。(だったら、嘘を申告することもできる訳だ。ここでも、安全性等絵に書いた餅……おざなりの行政がまかり通っている。)

  二年二ヶ月余という歳月を経ても、こうしたこと事態が放置されたまま、福島県民たちを右往左往させ不安にさせている。

私の立ち位置

  甲状腺患者は、T4製剤を生涯飲まなければならないことは何度も述べてきた。甲状腺の機能が損なわれているいうことは、何らかの形で免疫機能に問題を抱えている患者が多いことが予測される。
現在、対処方法は分かっている。すなわち、甲状腺ホルモン剤を補填するという治療方法である。しかし、なぜ、自己免疫が甲状腺という自己の臓器を攻撃するのか、学会でもそのメカニズムは解明されていないようである。

  あすか製薬は、こうした免疫力のない患者を対象に、薬を製造しているのである。その自覚を持ってもらわなければならない。
薬事法の順守は当たり前のことではないか。自然放射線だから安全値であるからと言っても、それは黴や微生物ではなく、放射線なのである。健常者ですら躊躇われる状況なのに、免疫力の感度が喪われている患者に放射線が安全な訳もなかろう。
情報にも、透明性がなければならないだろう。( 薬事法第五十六条では、次のいずれかに該当する医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。と言っている。該当しそうなのは、六 異物が混入し、又は付着している医薬品 また七 病原微生物その他疾病の原因となるものにより汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品である。)

  にもかかわらず、当時98%のシェアを持ていたあすか製薬は、自分の顧客であるはずの甲状腺患者の安全性に配慮することもなく、自社の既得権を必死で守った。そして、60万もの甲状腺患者の安全性をないがしろにした。 
一方で、同市に立地するという同条件にある大手製薬会社は、同様に被災し倉庫、工場に損傷を受けながら、製造倫理から在庫品の出荷を見合わせた。

 先の回にて、それぞれの立ち位置に触れたが、その立ち位置、すなわち、製薬製造の倫理感が問われている。
あすか製薬は、8月22日のニュースリリースにおいて、GMサーベイメーターで放射線を測定したと掲載していたが、私が経口している茨城県に立地している大手漢方製薬会社は、「ゲルマニュウム測定器を使用して放射線検査をしている」と言っていた。そもそも、薬をGMサーベイメーターで測定して損傷していた倉庫から出荷してしまって自然放射線内だから安心としているあすか製薬の感覚自体、製薬会社として首をかしげる。

 原発事故があり、一万ベクレルの放射線が福島県南部から茨木県そして栃木県辺りまで流れたことは、原発事故一年後NHKが報道している。(にもかかわらず、福島県民健康調査」検討委員会では、未だ低線量被曝の影響はないという見解を示している。甲状腺ガンになった子供も、放射線の影響ではないとしている。)
今後数年のうちに、子供達の甲状腺ガンが増加していくことは予測された未来だ。(しかも、放射線による甲状腺ガンは、転移が早く生涯苦しむことになるという。このことは、甲状腺腫瘍ガイドラインに記載されている。)
90%シェアのあすか製薬のチラージンSは、まちがいなく、この子供たちに繋がっていく。それゆえ、製薬会社の立ち位置、すなわち倫理感が重視されるのだ。

 私は甲状腺患者である。ゆえに、私の立ち居地は、安全性をないがしろにしたあすか製薬そして日本甲状腺学会を含む五学会に対峙する。

 命に関わる公的な緊急輸入が、こんな形で学会や製薬会社の既得権で誘導され、私的に使用された事を忘れない。
そして、それが既成事実となり、もはや、何事もなかったかのように既得権が維持されていることに怒りを覚える。
90%というシェアの歪みは、誰も手をつけようとしてつけられなかったボリュームである。甲状腺患者の殆どは、このパーセンテージに吸い込まれるだろう。すなわち、甲状腺患者の命はあすか製薬のチラージンに握られ、囚われるのである。このままのシェアが続く限りは……。
 
 90%シェアを張るなら、それなりの矜持と責任を取ってくれる会社でいて欲しい。それができないならば、この甲状腺ホルモン製剤の世界から出て行ってほしい。私たちは、FDA査察を順守するような製薬会社にそのシェアを割譲すべく力を注ぐだろう。


世界は、グローバルになっている
私は、これからも様々な場所に働きかけ
その比率を裂くべくエネルギーを傾ける

 
なぜなら、この形態はフェアではないからだ
なぜなら、この形態は透明感に欠けるからだ


私たち患者は、学会のために生きているのではない
私たち患者は、製薬会社のために生きているのでもない
己の尊厳が守れるように
自らが薬を選択できるように
自らが屈服させられないよう声を上げていく



私が甲状腺患者である限り
経済に売られたことは忘れない
命を語りつつ その舌に権益を載せ
どこまでも既得権に固執する五学会
私は、どこまでも、あなた方と対峙する
これからも、あなた方の死角を捜すだろう



私が甲状腺患者である限り
安全性をないがしろにされたことを忘れない。
これから予定される子供たちの苦難と涙を忘れまい
彼らが経済に渡されないよう怨念の焦点を絞ろう
私はあなた方に対峙する
あなた方の心の闇を照射する



この闘いは
福島の被曝者たちとも繋がっていく
なぜなら 彼らも尊厳を屈服させられているから
なぜなら 彼らも自由を囲われているから



この原発事故は、現実における踏み絵となろう
私が対峙する的は絞られた
今後の的は、様々な所へ飛び火する
あとは、また淡々と闘うのみである

(第一部終了)

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2013年5月24日 (金)

甲状腺患者から見えた原発事故--患者としての体験(18)

 

   本当に安全だったか……当時のあすか製薬の薬

 

   
  関係官庁が何もしてくれないので、私は自力で2%シェアのサンド社の薬に切り替えた。しかし、かなりのエネルギーを必要とした。(その困難な体験、追い詰められた実情や経緯は、先に詳述した。)

  サンド社の工場は山形県にあるが、あの原発後のホットスポットの存在や汚染地図を眺めた時、本当の意味での安全な薬は、やはり、緊急輸入製剤ではなかったかという思いがしきりである。(サンド社の山形県上山(かみのやま)工場は、福島県の隣県である。放射線セシウムの分布図では、西日本までたどり着いているとされる現在では、安全な距離ではない。

 緊急輸入製剤は4月16日~5月中旬に5570万錠輸入されたというが、(これはサンド社今年2月12日確認した。事実、代理輸入をしたとされるサンド社は、原発事故当初、4月7日「86万8百錠をあすか製薬川崎事業所へ出荷しました。今後、5週間以内に5000万錠を弊社からあすか製薬に順次出荷する予定です。」とホームページのニュースリリースで言っていた。実際には、若干の誤差はあったようだが、この通り緊急輸入された。
サンド社が子会社のドイツから輸入し、あすか製薬が発売者となり、武田製薬の販売網に載せたようだと、前にも述べた。

  しかし、輸入品はそれだけで終了してしまった。あすか製薬の薬が本当に安全だったのか不明なまま……。
私は原発事故直後、4回厚生労働省に電話を入れていたが、業者の開示した数値につき、関係官庁がチェックしてくれた訳でもなく検証してくれていた気配はなかった。「そんなことをしていたら流通が止まってしまう。」と言い、何かと言えば、ガイガーカウンター不足と「供給」不足を繰り返すだけだった。

  あすか製薬2011年8月22日のニュースリリースで放射線の環境線量の累積数値と在庫品の放射線値を公表し、自然放射線を大幅に下回る範囲だったので問題ないと言った。しかし、そこには損傷した倉庫から在庫品を引っ張り出し出荷してしまったという記述はない。(承認した福島県薬務課担当者は、外枠は破損せず、内壁が部分的に落ちた位であり、変形した在庫品ではなく、棚に整然と並んだものを出荷したと言っていた。原発事故当初、電話でやり取りした記録が残っていたと証言した。しかし、意地の悪い見方をすれば、それは電話確認だけなので事実かどうかも定かでない。後に、あすか製薬を訪問しチェックした日時も明確でなく、ただ大分後だったと記憶していると、自ら点検したという担当者S氏は言った。しかも、修理に関しては書類申請が不要だと言う。)

 あすか製薬はニュースリリースで放射線には触れているものの、損傷した倉庫から在庫品を出荷してしまったということは、どこにも記載していない。
(私が、電話確認をして、この事実を知ったのは昨年3月30日だったが、損傷した倉庫から取り出した在庫品を出荷してしまったという事実の衝撃に、凍りついて言葉を失った。驚きの余り当惑し、その影響を考えると胸に秘めるしかなかった。)

  繰り返しになるが、原発事故当初、3月18日雑草の放射線濃度はヨウ素690.000ベクレル/kg 、セシウム17.400ベクレル/kg3月23日ヨウ素451.000/kg、セシウム30.300ベクレル/kgという数値が検出されていた。また、福島県7方部環境放射能モニタリング資料によれば、3月15日2:00amには、18.4μ㏜、4:00amに23.72μ㏜という数値となっている。
にもかかわらず、いわき市2011年4月25日段階で、ホームページに雑草のデーターは掲載していなかったし、3月15日のデーターをカットし、16日も大幅にカットして掲載していたことは何度も書いてきた。

  私は、原発事故直後からあすか製薬には問い合わせをしてきた。私は、その点をいわき市にも確認していた。(その経緯は先に記述した。)
先にも述べたが、あすか製薬は当初、いわき市の大気の放射線測定結果は低いとして、4月22日のニュースリリースには「学校も開いているし、企業も開業し始めた」とし、抽象的安全宣言をしてしまった。


 
昨年3月NHK特集が報じた放射線プルームの存在


 
  改めて、昨年3月11日NHK特集において、科学的検証から一万ベクレルの放射線プルームが、原発事故後3月15日いわき市を通過したという報道が流されても、あすか製薬は自社のニュースリリースを訂正もしない。
一方、いわき市も二年も経っても、当時文部科学省の雑草のデーターのことなど公表もしないまま、地価を上げた。
2011年4月15日の雑草の放射線値は、放射線ヨウ素12300ベクレル/kgセシウム1372170ベクレル/kg検出されている。少なくなったとはいえ、決して少ない数値とは言えまい。

  いわき市は、4月には学校も開講し、地産地消の原理に則り、給食まで福島県産を使用させたと聞く。しかし、4月11日いわき市には雑草の放射線ヨウ素は、まだ110000ベクレル/kg残存していた。
この雑草のデーターは、文部科学省のモニタリングデーターだったが、一度もいわき市のホームページから排除されていなかったことだけは分かった。(昨年3月いわき原子力災害対策本部に電話したが、担当者、自身が知らない状況だった。一応、リンクを貼っていたというので、今年、5月末確認したが、もはや確認する術もなく分からないということであった。とうことは、二年余も市民には知らされなかったし、今後も知らされる予定もないままであろう。)

  しかしながら、こうしたデーターの意図的掲載は、いわき市だけではない。いわき市が原発事故当初リンクを貼っていたと主張する福島県も、水素爆発事故から三日後の3月15日福島市雑草のモニタリングデーターを公表していなかったというのである。
2011年6月7日(asahi.com)の報道によれば、「福島市内の雑草から1キログラム当たり100万ベクレルを超える高い放射能が検出されていたことが分かった。公表されたのは、翌日に別の場所で測った6千分の1ほど低いデータだけだったという。実際には、福島市の国道114号付近の雑草からはヨウ素119万ベクレル、セシウムが16万9千ベクレル検出されている。」とのことである。(これでは、いわき市のリンクを貼ってあったという主張も眉唾ものになってくる。)
結局、文部科学省の雑草データーは3月18日一覧にされて発表されているので、水素爆発直後の一番高い数値を、政府も福島県も公表しなかったことになる。

  となると、いわき市の給食の地産地消の福島県産の安全性についてはどうだったのだろうかという疑問も湧いてくる。(当時、子供に対し100ベクレルという暫定基準すら高すぎるという議論もあった。)
とりもあえず、いわき市は2011年4月22日原発事故直後にもかかわらず安全宣言をしてしまった。
そんな経緯がありながら、あたかも原発事故などなかったかのように、あすか製薬のシェアは90%に戻っている現実がある。まさに、あすか製薬が想定した通りの現実になった。

  サンド社への確認で T4委員会は緊急輸入の際に、どうやら「あすか製薬救済チーム」を演じたことも分かってきた。少なくとも、患者の側に立たなかったことにT4委員会のメンバーは、医療専門家として多少なりとも申し訳なさを感じてくれたりはしないのだろうか。しかも、あすか製薬が、損傷した倉庫から取り出した製剤を出荷してしまったという事実を知ったら、それでも安心と総括、それを患者たちに経口させたであろうか。
公のホームページに安全性を宣言しながら、あすか製薬は、そのことだけはしなかった。なぜか……それは、とんでもない行為だからである。
改めて、あすか製薬2011年8月22日のニュースリリースを公開し、その矛盾を検証をしようと思う。



  
■あすか製薬のニュースリリースの再点検する

 

 以下、あすか製薬の8月22日のニュースリリース全文を掲載してみよう。

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                                     2011 年8 月22 日
 各 位

      福島県いわき工場の放射線の影響に関するお知らせ

                                   あすか製薬株式会社

                             
 弊社製品は主に福島県のいわき工場※1で生産されておりますが、福島第一原子力発電所被災による放射線の弊社製品への影響につきまして、弊社の対応および見解をお知らせいたします。
                      ※1:福島県いわき市泉町下川字大剣1 番

                    
いわき工場における医薬品製造について

 福島第一原子力発電所の事故による医薬品の安全性への影響の問題を受け、政府は、「医薬品の原材料(製薬用水等含む)について、水道や食品の基準等により放射能等も含め、検査や管理がなされているため、最終製品の医薬品は安全であり問題ないと認識している。各製薬企業にスクリーニング等を求めることはない。」との見解が述べられております。

 日本製薬団体連合会の考え方においても、「医薬品は必要に応じて限定的に摂取されるものであり、食品や水に比べ通常の摂取量は極めて少なく、健康への影響は極めて少ない。また、製造工程はGMP 等に基づく厳密な管理に基づいており、その工程での汚染リスクは極めて小さい。」と述べております。

 このことからも弊社の製品においては、安全性に問題はないと考えておりますが、品質および安全管理に万全を期すため、次に記載する独自の管理を行っております。

 1.放射線量の測定管理

 (1)出荷製品の測定

 ① 測定場所:工場倉庫内にて測定
 ② 測定方法:GMサーベイメータを使用し、全製品を出荷直前に毎回測定
 ③ 測定結果:全ての製品において自然放射線量※2の範囲内であり、放射 線障害防止法 の規制値である4 Bq/cm2を大幅に下回っていることから、全く問題ありません。
 ※2:GMサーベイメータ(TGS-133)で測定する場合の自然放射線量は40~60cpm※3であります。この自然放射線量の40~60cpm を表面汚染密度(Bq/cm2)に変換すると0.12~0.18 Bq/cm2※4となります。
 ※3:日本放射線安全管理学会誌第6 巻1 号(31-36)放射線計測特集より
 ※4:「緊急被ばく医療対応マニュアル」 国立病院療養所東北放射線技師会編より*〔cpm:カウント・パー・ミニット、Bq/cm2:ベクレル〕

 (2)環境検査の実施(デジタルポケット線量計を使用)

 工場屋内にて放射線量を計測:3 月~7 月の総積算値は72μSv(マイクロシーベルト)であり、 文部科学省が示した年間20mSv(20,000μSv)の基準を大幅に下回っていることから、全く問題ありません。

 
 2.医薬品の製造用水の管理

 
(1)空調や機器の洗浄等に使用する水は、いわき市の水道水を使用し、放射線量の測定は水道局から発表される「水道水の放射性物質の測定結果」を参考にしております。
「放射性物質はすべて不検出」と公表されております。
 
(2)医薬品の製造用水は、いわき市の水道水を精製した水を使用しており安全上全く問題ありません。

 弊社は、従来より品質および安全管理に万全を期すよう努めており、放射線量につきましては、今後も引き続き管理を徹底し、監視して参りますので、何卒ご理解をいただきますよう宜しくお願いいたします。

                                                                                                以上

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  あすか製薬の安全性を主張するニュースリリースを掲載してみた。これについては、様々な綻びが見つけられる。
4月22日のリリースについて、あすか製薬は、同社の工場が立地しているいわき市の放射線測定結果を参考にしていると自ら言っていた。
ところが、その肝心な同市は、文部科学省の雑草のデーターを全く掲載していなかった。(これは再三記述しているが、かなり高い数値であった。 今年2月あすか製薬の8月22日のニュースリリースの件で文部科学省放射線対策放射線規制室で確認を取った時、私が「雑草の放射線セシウムの数値が30300/kg検出されていた。ゆえに懸念する」と担当官に伝えると、「それは濃い数値ですね。」と言われた。専門官から見ても高い数値なのである。(この濃い数値をいわき市は、ホームページに掲載していなかった。そして、現在でも掲載していない。)

  原発事故直後、5月に不安であすか製薬に電話を入れて確認したが、無論、その高濃度の数値を知らなかったし、福島県7方部環境放射能の初期データーも知らなかった。すなわち、あすか製薬4月22日のニュースリリースは、いわき市による作為的情報公開を信じきったための情報となってしまったという訳である。
しかし、思い返せば、私は、4月及び8月のニュースリリースにも若干関わりを持っていると言える。というのも、あすか製薬からこの二枚のニュースリリースを掲載させたのは、私であったのかもしれないということだ。どうやら、私の執拗な要求に屈した形で、あすか製薬は一枚目のリリースをしぶしぶ掲載したようだ。(確かに、私は執拗にあすか製薬に安全に関する要望をした。)

  原発事故当初4月21日 厚生労働省監麻課の監査官へ電話し、いわき市の雑草の放射線値が高いことに触れ「薬の放射線基準」について要望し、また、あすか製薬の出荷品から放射線が検出されたことを聞いた旨報告した。その折、「あすか製薬は、ホームページに一言も放射線のことを触れない。」と不満を述べた。結果、翌日4月22日一枚目のあすか製薬の「福島県いわき工場の放射線の影響に関するお知らせ」がホームページに掲載された。

  この後4月28日 厚生労働省監・麻課の担当者へ電話を入れた折担当者から「あすか製薬のホームページを見たか」と聞かれた。が私は、そっけなく「見たが納得していない。薬の放射線の基準もないし、安全と一方的に言っても数値の具体がない。」と答えた。(しかし、思い返せば、この監視官が働きかけてくれたのだろう。その時の私は、4月22日の同社のニュースリリースに失望していたので、その監視官の働きかけに感謝もせず、他の話に進んだ。結局、正確な確認を取らないまま、現在ではその監視官は移動になってしまった。)
こうした経緯から、あすか製薬厚生労働省監麻課の指導の下、一枚目のニュースリリースを出さざるを得ない状況に追い込まれたのではないかと推測する。

  しかし、4月22日あすか製薬のニュースリリースの内容については、満足すべき内容でもなかったため、この後、何度か同社の薬相談室に電話を入れた。この何回かのやり取りから、二枚目の8 月22 日あすか製薬のニュースリリースが掲載されたようである。(と、あすか製薬の薬相談室の責任者が言っていた。)思えば、この二枚のあすか製薬のニュースリリースが、ある意味で私に大きな情報をもたらしてくれたということは皮肉でもある。
4月22日のニュースリリース方は、地方自治としてのいわき市の情報掲載の作為がなかったかという問題、そして二枚目8月22日の功績は、原発事故直後40日位で発布された「輸出添付文書」の存在を公に知らせてくれたことである。(もっとも、同社の意図は、単に、自社の安全性の裏付けとして両見解も掲載したのだろうと推測するが……。)
そして、ここから、私の疑問追跡の旅が、始まった。

  しかし、8月22日のニュースリリースは、矛盾だらけのものになってしまった。
放射線測定を開始した日も正確な日は掲載されず、公文書としては不正確で不誠実なものとなっている。(悪意で見れば、このこと事態、作為的と見られても仕方ない部分も潜んでいる。 けれど、それゆえ特異な存在となって、隠蔽したはずの政府見解まで公にしてくれた。そして、厚生労働省を当惑させ動揺させた。余り特異なので日本薬剤師会の総務の担当者が、同社のニュースリリースのことを記憶していた。)
ともあれ、このあすか製薬の二枚のニュースリリースは、様々な情報を浮かび上がらせるキッカケとなったことは事実だった。

 
8月22日のリリースをチェックしてみよう

 
  この8月22日のリリースについては、私が知ったのが2011月12月末であった。(私は5月末に薬をサンド社に切り替えた後は、あすか製薬のニュースリリースは追いかける必要性もなくなり、関心を失った。個人的にも、頭をぶつけたり、左半身の痺れを感じたりと検査などで多忙となった。)

  10月に漢方の生薬から放射線が検出され、その時の報道で、日本製薬団体連合会の存在を知った
そして、日本製薬団体連合会へ薬の放射線基準の設定を働きかけをしてもらいたい旨依頼した。また、いわき市が雑草の高線量のデーターを掲載していない旨記述し、ついでに、あすか製薬は放射線が検出されたと言っているのにデーターを公表しないことも訴えた。
同連合会から返送されてきた手紙に、資料としてあすか製薬8月22日ニュースリリースが添付されていた。そして、驚いた。日本政府の見解が掲載されていたりしたからである。ここから、私は「政府見解」についての真偽について追跡することになった。)

  この8 月22 日あすか製薬のニュースリリースについては、実に様々な問題提議をしている。(例えば、政府見解とは?とか、日本製薬団体連合会日薬連発第243号にまつわる問題点等である。)
まず、最初の文から見ていくと……
「福島第一原子力発電所の事故による医薬品の安全性への影響の問題を受け、政府は、『医薬品の原材料(製薬用水等含む)について、水道や食品の基準等により放射能等も含め、検査や管理がなされているため、最終製品の医薬品は安さきにも全であり問題ないと認識している。各製薬企業にスクリーニング等を求めることはない。』」との見解が述べられております。」についてだが、これは、2011年4月22日に発布された輸出用添付文書である。
外務省の働きかけにより厚生労働省経済課監麻課が作成したという。

  この経緯の詳細は先に述べたが、何度も言うが、「日本で製造されている医薬品及び外国に輸出している医薬品について放射能汚染の問題はない」とし「スクリーニングの必要もない」と言っている。それは医療機器から化粧品にまで及ぶ。この政府見解に関しては、報道発表もなかったため日本医師会の医療安全課の担当者も知らなかったし、薬剤師会の総務課の担当者も知らなかったという現実がある。
「薬事新報」という医療専門紙も、「その文書のことは知らなかったし、掲載していない。」と回答した。無論、新聞にも掲載されていなかった。輸出添付文書として、政府見解を発布したことは事実だった。(情報開示でその文書の存在を確認した。)
 

  けれど、あすか製薬8月22日のニュースリリースに戻れば、この輸出向けの文書を同社が掲載していること事態が見当違いと言えよう。
というのも、この政府見解は、輸出企業向けにこれを発布したからである。(といっても、原発事故後たった40日で、日本国中製薬品の安全宣言をしてしまっているのは、矛盾ではあるのだが……。それでも、原発事故の海外危惧への対応策として、外務省要請で、厚生労働省が作成したものであった。)

  にもかかわらず、あすか製薬は自社の安全宣言にこの文書を動員し、ピントはずれな文面を作り出し、少なからず目にした人々を驚かせた。(しかも、この文面を書いた本人は、「存在はあることは分かっていたが、目にしたことがない」と言っていたので、文責についても無責任である。)
しかし、結果的に、厚生労働省と外務省が内密裏に進めようとしたことへの蓋を開けてしまったという意味では、大いに貢献をしたことになる。

  次に日本製薬団体連合会の見解についても触れている。
「医薬品は必要に応じて限定的に摂取されるものであり、食品や水に比べ通常の摂取量は極めて少なく、健康への影響は極めて少ない。また、製造工程はGMP 等に基づく厳密な管理に基づいており、その工程での汚染リスクは極めて小さい。」と……。
この文章を目にして、私は日本製薬団体連合会の見解についても、「医薬品は必要に応じて限定的に摂取されるものであり」という部分は、「患者の現実とそぐわない。甲状腺患者は恒常的に薬を摂取しなければならない。」日本製薬団体連合会に反論の手紙を書いた。再度、同連合会の理事から、訂正し謝罪する旨の返答を得た。ゆえに、この論理も崩れることになる。

 「製造工程はGMP 等に基づく厳密な管理に基づいており、その工程での汚染リスクは極めて小さい。」との文章については、あすか製薬は自ら製造工程はGMP 等に基づく厳密な管理の条件下で操業しているから安心と宣言しているにもかかわらず、損傷した倉庫からの製品の出荷ということは、自らこの厳密な管理条項に背いていることを証明してみせている。さらには、若干であれ放射線が検出されている在庫品を出荷してしまったということ事態、言語道断ということになってしまうだろう。

 原発事故直後、あすか製薬3月25日ニュースリリースに同社はこう掲載している。「今回の震災に伴い、いわき工場の製造設備および立体倉庫が損傷したが」と…。この時点で、自社が損傷氏したことに自ら言及していたのだ。
すでに原発事故も起こっており、3月15日一万ベクレルの放射線プルームはいわき市を通過し、雑草に3月18日放射線ヨウ素690000ベクレルが検出されている。3月25日には170000ベクレルである。セシウムは3月23日30300ベクレル最高で検出されている。(繰り返すが、これは濃い数値であるらしい。文部科学省放射線規制室の専門家に尋ねたが、大抵この数値に唸る。)

  私は当時、原発事故直後、5月6日あすか製薬に電話をして、責任者に雑草の数値のことを伝えた。これが合同庁舎と同じ住所となっているにもかかわらず、いわき市のホームページにこのデーターが掲載されていないこと、また、福島県薬務課にも電話したが「それは何の数値ですか?」と聞かれたこと等も伝えた。(この当時、私自身、まだ県内7方部環境放射能モニタリングデーターについて発見できていなかった。)
この当時、いわき市の測定データーを信じていたあすか製薬も、県内7方部放射能環境測定のデーターは知らなかった。その後すぐ、私は美浜会というNGOからこの情報を得たので、その情報は5月10日あすか製薬に伝えた。

  当初3月25日時点で、既にあすか製薬の倉庫は損傷していたことはニュースリリースで公表されていた。かつ、操業開始したのは3月26日であるのだから、いろいろな状況を鑑みれば、あすか製薬の立地するいわき市が放射線のリスクがあること位は、学会も厚生労働省も把握してなければならなかったはずである
この論理から言えば、いずれにしても、あすか製薬の言うGMP 等に基づく厳密な管理は、ここで既に破綻しているのである。損傷の程度がどの程度であれ、倉庫が損傷し現実に在庫品から放射線が若干であれ検出されている以上、それは出荷等できないはずなのだ。

  会社名を伏せて日本製薬工業協会に聞くと「埃や微生物等でも基準に引っかかる可能性もある」と慌てていた様子だった。そして「それは製造者判断ではないか」と回答した。倉庫にもGMP の管理は適応されるようだ。
同市に立地している某製薬会社に確認した。同社も津波で工場を破損していて条件は、同じ様に見えたからだった。
私は「いわき市は文部科学省の雑草のデーターは、かなり濃い数値であったこと。現実に、若干であれ放射線が検出された製薬会社があったが、厚生労働省は、薬の放射線基準が設定されていない当初、それは薬事法にのっとり製薬会社の責任としか判断してくれないが…。御社の対応はどうだったか。」と聞いた。
電話口に出た担当者は「製造者はFDAの厳しい査察があるので、それに違反したら製造できなくなってしまう。倉庫にも基準がある。厚生労働省の判断と言っても無理で、製造者の自主規制みたいなものがある。」と放射線等論外との感じだった。無論、同社は損傷した倉庫から在庫品等出荷していない。

 
「測定結果:全ての製品において自然放射線量の範囲内であり、放射線障害防止法の規制値である4 Bq/cm2を大幅に下回っていることから、全く問題ありません。」とあすか製薬は言うが、 ここで問題視されるのが、放射線障害防止法の捉え方である。

 私は何を聞いても分からないので、2月19日文部科学省科学技術学術制作局放射線対策課放射線規制室に聞いた。
「放射線障害防止法規制値である4 Bq/cm2というのは、管理区域から放射線物質を持ち出す基準だと言う。GMサーベイメーターは精度がいいのでベーター線も測れる。4ベクレル以下ということなら、クリーンな状態で測っているとは言える。ただ、それを薬に適応できるかどうかについての判断は、厚生労働省になる。」とのことだった。
(しかし、放射線についての問い合わせはどこに聞いたらいいのか分からないまま、環境省に電話を掛けたり原子力規制庁政策評価広報課に掛けると、それはコールセンターへ掛けるよう指導されたが分からず、原子力規制委員会の事務局に掛けても放射線について受付の事務職はその知識もなく、やっと文部科学省の放射線規制室の窓口に到達した時は、疲労困憊の状態であった。


 
計測:3 月~7 月の計測の実態は3月26日の誤り


 

(2)環境検査の実施(デジタルポケット線量計を使用)という項目について、あすか製薬、「工場屋内にて放射線量を計測:3 月~7 月の総積算値は72μSv(マイクロシーベルト)であり、文部科学省が示した年間20mSv(20,000μSv)の基準を大幅に下回っていることから、全く問題ありません。」と記載している。
工場屋内の放射線量の計測は3月からといっても、あすか製薬の工場再開は3月26日からなので、放射線の実際計測はこの日から以降になる。
にもかかわらず、あすか製薬のニュースリリースには3月と掲載されている。3月といっても、残り6日しかない。こよなく4月に近い数値である。本来ならば、きちんと3月26日と記載すべきであろう。
故意にこうした操作をしたのか分からないが、こういう書き方は、放射線の数値が希釈される。(消費者庁に尋ねると、景品表示法に抵触する可能性もあるとのことだった。
第一、3月26日以前はあすか製薬の工場も倉庫も破損していた。一番放射線が高かった日時に、両者とも無防備な状況で放射線に晒されていたということになる。

  今年2月6日 私の問い合わせに武田製薬工業が、その詳細を回答してくれた。それによれば、工場内の環境積算量は原発事故当初、3月は8μシーベルト、4月は16μシーベルト、5月は14μシーベルト、6月は23μシーベルト、7月は9μベクレルとなることは聞いた。(原発事故が起きた当初、3月に26日と記載されていなければ、随分少ないという印象を与える危惧がある。)
損傷したのは第三立体倉庫。ダンボールに入れていたものを測り、ロットで測り、出荷直前三回測ったそうである。このことは武田製薬には報告が入っていたらしい。しかし、武田製薬はあすか製薬のニュースリリースは読んでいなかったようである。
最初、大慌てで「あすかに聞いてみる。」と言ったが、この時点では、武田製薬は放射線が検出されたことを「微量であるから大丈夫ではないか」というニュアンスに変えた。
結局、武田製薬の相談室の担当者は、概ねあすか製薬のニュースリリースと同様なことを繰り返していた。「工場はこよなくゼロに近いものであってほしい。」と私は言ったが、担当者は「原発事故があったので……。」と回答した。
武田製薬自身、「放射線には素人なので、それ以上踏み込んだ判断は、文部科学省にでも聞いて欲しい」という意向だった。
この時点では微量ならば致し方ないのだろうか……私も素人なので、判断はつかなかった。しかし、何か納得がいかないまま、私の判断は揺れていた。
GMサーベイメーターと言われても実態もつかめず、仕方ないのでインターネットで検索し、一番苦手な放射線科学を若干勉強せざるを得なかった。(一応それにり知識を頭に入れてから、専門家に聞くしかなく文部科学省の担当課を探したのだった。)

今年2月7日文部科学省科学技術学術政策局原子力安全課に電話した。が、一般相談窓口に回されてしまった。そこで、加藤氏という責任者の下で対応している担当者と話をした。私は、あすか製薬のニュースリリースに掲載されている具体的なデーターを読み上げて聞いた。
ここで問題となったのは、放射線障害防止法である。担当者は言った。
「事業所は管理区域として事前登録しておく訳だから、今回のように原発事故のような状況に適応している訳ではない。」と。
「製薬会社は自然放射線内だから大丈夫だとしているが、それでいいのか」と私が尋ねると「自然放射線といっても、場所場所によって違うので何とも言えない。」との回答だった。

  録音がうまく入っていないので、もう一つ分からなかったので、2月13日文部科学省科学技術学術制作局放射線対策課放射線規制室に電話をしたが、また、一般相談窓口に回された。再度、同様なことを読み上げて尋ねた。「GMサーベイメーターで測ったとされているが、それはどうか?」と尋ねると「GMサーベイメーターでも、ベーター線が測れるものなら測れる。」
「放射線障害防止法は、放射線を使ったりする事業者が管理区域を作って一般の人に被曝させないように下さい」という法律。4ベクレルというのは放射線管理区域から汚れた物を持ち出すときの基準値である。」
とのことだった。私は、続けて聞いた。
「GMサーベイメータ(TGS-133)で測定する場合の自然放射線量は40~60cpm。この自然放射線量の40~60cpm を表面汚染密度(Bq/cm2)に変換すると0.12~0.18 Bq/cm2となるという部分についてはどうか」と尋ねたところ、「汚染という意味では、かなりクリーンな状態とは言える。では、3 月~7 月の総積算値は72μSvであるから、それを日数で割ると72μSv÷120=0.025位になる。放射線としてはデーター的には、余り問題ないのではないかと思う。しかし、それが薬に適応できるかどうかは、やはり、厚生労働省の管轄になる。」との回答だった。

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損傷した倉庫から出荷した…あすか製薬

  総括すると、文部科学省科学部門の一般相談では、専門家から見るとデーター的には、余り問題ないレベルであるということだった。しかし、それは薬に適応できるかどうかは厚生労働省の判断ということになった。
データーはクリーンな状態であることを認めたとして、このあすか製薬のニュースリリースには、損傷していた倉庫から出荷したという文言の報告はない。
このリリースを読んだ患者は、放射線が検出されたことは理解したとして、損傷した倉庫から出荷したという情報は、どこにも書かれていないことだ。問題は、そのことなのだ。
今になり改めて原発事故初期段階からの過去のあすか製薬のニュースリリースを再検索してみると、3月25日同社は、こう掲載している。

  すなわち「今回の震災に伴い、いわき工場の製造設備および立体倉庫が損傷したが、復旧に向けて全力で取り組み、本日より「チラージンS」の生産、出荷を開始したことをお知らせするが、生産体制は充分ではないので、ご理解ご支援お願いしたい。」と……。
3月25日と言えば、同社が工場再開した前日である。倉庫が損傷したことは認め、出荷を開始したことも公にしてはいながら、出荷した製品に関しての詳述はない。(ゆえに、関係官庁も私も、損傷した倉庫と出荷してしまった因果関係を結びつけられなかった。まさか、製薬会社が損傷した倉庫から取り出した在庫品を、自然放射線の範囲だからと自己判断し、出荷してしまうという事態を想像し得なかったのだ。)
 
  
  このことは重要な意味を持つ。なぜならば、当時、あすか製薬は98%のシェアを占めているからだ。当時、供給も切迫して数も必要だっただろうと想像もする。それでも、あすか製薬の持つシェアの意味は大きい。患者には選択権が与えられていないからである。このシェア自体が問題なのである。(無論、それは医療行政の歪みの結果であり、全面的なあすか製薬の責任だけとは言えないのかもしれない。)
とは言え、全国の患者は薬を選択できないということに変わりはない。患者たちは、病院から無条件にあすか製薬の薬を強要されるのである。それゆえ、安全性が一番重視されるのだ。そして、信頼性がなければならない。
自社の既得権のために、緊急輸入製剤が利用されることなどあってはならない。現在は90%シェアになっているが、まだまだ重いシェアである。このシェアゆえ、その責任は重大なのである。

  同市と同じロケーションにあって、工場や倉庫を破損した製薬会社は、在庫品を出荷しなかった。なぜか? その理由は、それが薬だからである。なぜか? 国際基準に則り、自主規制をし、己の倫理性の中で薬を製造しているからである。

立ち位置はどこになるのか

  甲状腺患者は、製剤を生涯恒常的に飲まなければならない。甲状腺手術をした患者は、薬がないと、即命に関わるのだ。あすか製薬には、免疫力のない患者達の薬を製造しているという自覚を持ってもらわなければならない。
自然放射線だから安全値であるからと言っても、それは黴や病原菌等ではなく、放射線なのである。免疫力の失った人々を対象にする薬なのである。
それゆえ、少しの汚染があってはならないだろう。
情報にも虚偽があってはならない。すべてに透明性がなければならないだろう。( 薬事法では第五十六条 次の各号のいずれかに該当する医薬品は、販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。と言っている。該当しそうなのは、六 異物が混入し、又は付着している医薬品 また七 病原微生物その他疾病の原因となるものにより汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品と定められている。ここに抵触する可能性もある。)
 

  これから増加するかもしれない子供達の甲状腺ガン…鈴木眞一氏環境庁の公演で、子供の甲状腺ガンの予後を「予後がいい」と言った
しかし、今までのデーターには、そう書いていない。転移が早いという。
山下俊一氏自身、福島原発事故以前にはこう言っていたようである。「大人と異なり、小児甲状腺がんの約4割は、この小さい段階(超音波で甲状腺結節を見つけて1センチ以下、数ミリの結節の事)でみつけても、すでに局所のリンパ節に転移があります。」と……。(インターネットのブログで発見した。2009年3月チェルノブイリの調査結果からの報告より)また、こうも言っている。「いったん被ばくをした子供たちは、生涯続く甲状腺の発がんリスクをもつということも明らかになりました。」と……。 
しかし、福島原発事故以降は、子供の甲状腺ガンは「予後がいい」と言うのである。どちらが真実な言葉なのだろう。

  しかし、甲状腺腫瘍ガイドライン2010版にX線やチェルノブイリ原発事故後との例外があることは記載されている鈴木氏はみずから編集に携わったと言っていた。ガイドラインに嘘は書けないだろう。それは、医師が甲状腺ガンの線引きの判断をする重要な手引き書だからだ。 
だとすれば、時間との闘いだ。(オーストリアのカルディコット医師もそう言っていた。)子供たちの命のためにも早期検診は急がれる。

  あすか製薬のチラージンSは、この子供たちに繋がっていく。
それゆえ、その立ち位置、すなわちその倫理感が問われるのだ。
厚生労働省監・麻課は、薬事法が関わっている以上「それは製造者責任だ」と言った。日本製薬協会「それは製造者判断だ」と言った。事故当初、「薬の放射線基準」がなかった故にである。
 

 
  今回のあすか製薬を巡る一連の動き、関係官庁、関係学会、販売会社等の動きから推測すると、本当に患者の方を向いてくれていたのか……やはり、疑問を捨てきれない。
そして、命に関わる公的な緊急輸入が、こんな形で学会や製薬会社の既得権で誘導されるという事、そして、それが既成の事実になって全国の病院に何事もなかったかのように納品されるということに怒りを覚える。(余りの安全性軽視と透明性の欠如に呆れ果てる。)
にもかかわらず、あすか製薬のシェアは90%というボリュームである。甲状腺患者の殆どは、このパーセンテージに吸い込まれるだろう。
すなわち、甲状腺患者の命は、あすか製薬のチラージンSに握られ囚われるということになる

つづく

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2013年5月 2日 (木)

甲状腺患者から見えた原発事故--患者としての体験(17)

■輸入者はサンド社なのに副作用はあすか製薬が負う?

 
  五学会が親戚学会であることを紹介してきた。
この五学会の役員の重複持ち回り状態は、やはり、異様に見え、私の目には親戚五学会の様に映った。
そして何度も繰り返すが、その中心となる人物は日本甲状腺学会理事長の山下俊一氏の存在である。彼は、レボチロキシンナトリウムの供給窓口T4委員会プロジェクトの供給窓口の設定を提案した人物である。
単なる任意団体の日本甲状腺学会の理事長が、供給調整の窓口の立ち上げの旗を振り、(3月22日発布された小児内分泌学会のニュースリリースから読み取ると)リードしたことが明らかになっているのである。
(ここで問題なのは、生命にまで関与する重要なことが、一学会の上層部で決定され、果ては患者や子供の命まで囚われているような状況が、作り出されていることである。)

 重ねて強調するが、この理事長こそが、福島県にて様々な問題を巻き起こしている「福島県民健康調査検討委員会」の座長であった人物、かつ福島県立医科大副学長だったMr.100mmシーベルトと名付けられた山下俊一氏なのである

 (原発事故当初、私もその事実は知らなかったし、学会というものは神聖な場所であり、誠実な研究者の集まり等と信じていた。厚生労働省に「薬の放射線の暫定基準」を要望しても埒があかなかったので、原発事故後4月16日その要請のために、日本甲状腺学会へ手紙まで出し「薬の放射線基準」を設定してくれるよう要請までしていた。今から考えると己の無知に対する後悔しきりだったが、学究追求のための学会が、利権集団の一角であったかもしれないとは夢にも思わず、患者に寄り添ってくれると信じていたのだった。)
しかし、よくよく考えれば、山下俊一氏の動きは、すでにシナリオ通りなのであろう。

  2011年3月16日「全国保険医団体連合会」から内閣総理大臣宛にチラージンSの緊急輸入の要請があった。しかし、この公的緊急輸入の要請は、現実的には実現されなかった。
3月18日にはT4委員会が立ち上がり、同日日本医師会福会長中川俊男名で都道府県医師会宛に通達が出されている。
この通達によれば、この時点で、厚生労働省はサンド社に增産と輸入を要請したようであると掲載している。(しかし、実際は、あすか製薬が緊急輸入を依頼すべくサンド社を来訪した。そこから、緊急輸入は始まった。そして、この日本甲状腺学会もT4委員会も他五学会も、電話や文書で要請したのである。
結果、サンド社は、緊急事態でもあり患者の供給危機のため要請を受け入れ、その労を取ったようである。)
 

  そうした経緯で、輸入元はサンド社になった。
しかるに、副作用等は、あすか製薬が責任を取ると同社のニュースリリースには書いてある。
製造者であり販売者のサンド社が取るのでなく、発売者のあすか製薬が副作用の責任を取るという……これは、何を意味するのだろうか。
副作用の責任を取るのがサンド海外本社の子会社(HEXAL AG社)でもなく、輸入者かつ販売者のサンド社でもなく、発売者のあすか製薬が取るというのである。(あすか製薬の4月7日のニュースリリースにそのように記載されている。)

  本来、副作用の責任は本来誰が取るのか? この質問を今年3月22日厚生労働省安全対策課に尋ねた。
すると、「ケースバイケースだ」と言う。私はざっと経緯を話した。そして聞いた。「普通は、どこになるか?」と……。すると「普通は、製造者だ」と言う。しかし、「今回のケースは発売元のあすか製薬になっているのだが、変ではないか? 」
これについて感想を聞くと「それは業者間のやり取りの中でそうなったのかもしれない。」との回答だった。「しかし、そんな大切なこと、業者任せにしておいていいのか」と尋ねると「そうですねえ。」とのことで調べておいてくれることになった。

3月29日 厚生労働省安全対策課に電話をした。
しかし、調べてくれたのは、「現在はもう緊急輸入製剤は中止しているそうです。」というのが回答だった。私は言った。「現在のことは分かっている。私が不審に思っているのは、原発当初のことで、なぜ、輸入者でなく発売者が副作用の責任を取るのかということだ。普通は、輸入者だと前に言ったではないか。なぜ、こんな風に普通と異なる体制で副作用責任が取られるのか。その経緯を聞きたい。何故こんなことにこだわるのかと言えば、原発事故当初、あすか製薬は微量だが、放射線が出ていたからだ。このことは原発事故当初、厚生労働省の監・麻課にも言った。しかし、当時、供給一辺倒で私の意見は無視された。原発事故当初、いわき市に驚異的な放射線ヨウ素が出ていた。セシウムも30300ベクレル最高で出ていた。にもかかわらず、このデーターは、いわき市のホームページに掲載されていない。このことを当時、販売担当をしていた武田製薬工業にも伝えている。しかし、相手にされなかった。先日、この件につき御安全対策課に電話相談したら、副作用以外のことは監・麻課だと電話を回された。
先に電話した時は、まだ監麻課に調べてもらっている最中なので、それ以上は言わず、副作用のことのみ調べてほしい旨依頼した。
先ごろ監・麻課に電話をすると、あすか製薬を承認するのは福島県ということで、そちらの方と連絡を取ったが、とりあえず、壁はヒビ割れができたが、外枠は大丈夫だったので、放射線の曝露はないと言われた。
しかし、薬事法に則り、厚生労働省がどうこう言えない。当時、薬の放射線基準がないので当初の責任は、製造者にあると言われた。
それで御対策課には、副作用のみ相談した訳だが、あすか製薬から放射線が、若干であれ検出されたということであり、かつ倉庫から在庫品を出荷してしまったとなれば、御対策課だって関わってくることではないか。」と反論した。
 

  すると、安全対策課の担当者は「あすか製薬から放射線が出たんですか?」と聞くので「そのように8月22日のニュースリリースに書いてある。是非それを読んで欲しい」旨伝える。
先の「何故、輸入者のサンド社でなく、あすか製薬が何故副作用を取るのかということはどうなのか?」と戻ると「それは分からない。」とのこと。
私は「そんなことでいいのか?」と問いかけたが、「当時の書類は分からなくて…。」と回答があった。
「では自分で情報開示でもしないと仕方ないのか?」と問うと「そうですね」と同意した。
私は「放射線は出ている。そのニュースリリースを読んでおいてほしい。また、連絡する。」と電話を切った。

  後日、その件を確認したが、「それは安全性に問題なかった」という話で何も進展しなかった。
結局、何故発売者のあすか製薬が、副作用の責任をとるのかということは不明なままである。

  ただ、緊急事態ゆえの特例であったのか……私は、先に経済課総務係のS氏が説明してくれた「緊急輸入については、若干手続きを変更する必要がある。」との言葉を思い出し、もしかしたら、その書類が残っているかもしれない……この書類の情報開示をしてみようかとも考えた。

■やっぱりアクロバット……あすか製薬の動き

  福島第一原発事故直後、先の甲状腺ホルモン補填剤の不足により、緊急輸入をする窓口は当然、国であろうと思っていた。
しかし、実際の輸入者はサンド社だった。

  緊急輸入製剤は、4月16日~5月中旬5570万錠輸入された。(これはサンド社に今年2月12日確認した。)サンド社は、原発事故当初、4月7日とホームページのニュースリリースで言っていた。
「86万8百錠をあすか製薬川崎事業所へ出荷しました。今後、5週間以内に5000万錠を弊社からあすか製薬に順次出荷する予定です。」と。実際には、若干の誤差はあったようだが、この通り緊急輸入された。
 

 サンド社がドイツから輸入をしたとのことであるが、発売者はあすか製薬であり、武田製薬の販売網に載せたようである。しかし、副作用責任はあすか製薬が取るのである。
今回の緊急輸入は、輸入者サンド社に重なるように、あすか製薬の影があることが、ずっと気になっていた。
 
2011年原発事故当初、何かの時に問い合わせの折、サンド社「あすか製薬さんの輸入のお手伝いをする。」という表現をしていた。手伝いという表現は、輸入元がいて、それに手を貸すというスタンスだ。決して自分が主役ではないという表現だ。

  様々な経緯を鑑みれば、今回の緊急輸入を一番望んでいるのは、あすか製薬であることは分かっていた。従って、当初、私は輸入元はあすか製薬なのだと私は思っていた。
しかし、同社のニュースリリースを見れば、実際の輸入元はサンド社だった。そして販売者とも書いてある。では、あすか製薬は何になるかというと発売者なのである。そして、武田製薬工業の販売ルートに乗る。チラージンSと同じ販路である。

  あすか製薬2011年4月7日「レボチロキシン製剤緊急輸入のお知らせ」というニュースリリースには、本品の供給に至った経緯にこう書いてある。
すなわち、本品の供給に至った経緯を説明し、自社の安定供給に支障が生じていることを述べた後、事務的に説明している。
「そこで、サンド株式会社は厚生労働省の要請を受け、サンド海外本社の子会社(HEXAL AG社)からレボチロキシン水和物製剤(50μg錠)を輸入することにいたしました。」(サンド社が輸入することにしたと周知しながら、副作用に関しては発売元であるあすか製薬が責任を取るという。)
 

  しかし、この書き方はおかしい。客観的で、あたかもサンド社が、厚生労働省の要請を受けて輸入することにしたと、他人事のように書いている。にもかかわらず、副作用に関してだけは、発売元である「あすか製薬」が責任を取るのである。
 
今年三月、厚生労働省経済課にその経緯を確認したところ、情報開示サービスの一貫として総務係の担当者調べてくれていた。当時の担当者に確認した話として、この間のおおよその経緯を説明してくれた。
それによれば、「震災後、厚生労働省は被災の状況とかを把握するために、安定供給支障をきたす薬品があるかないかを確認していた。
その中で、チラージンSという薬が出てきた。
あすか製薬が被災したということから、これは供給が止まってしまう、チラージンSが危ないということから、供給確保に向かって(委託会社を含めて)対策を講じる様指導した。それでも十分な量に達しないようだった。2%シェアだが、サンド社は外資系なので輸入はできる。若干、承認の変更はしなければならないものの、そうした経緯でサンド社に輸入を要請した形になったと思う。」という説明してくれた。

 私は言った。「でも、いわき市は放射線が高かった。3月18日雑草に放射線ヨウ素は690000ベクレル出ている。セシウムも最高3月23日30300ベクレル出ている。震災直後あすか製薬は工場、倉庫伴に損傷している。そうあすか製薬もニュースリリースで言っている。
そもそも、そうしたリスクを抱えている会社の製品の安全性に対して、経済課は、何らかの確認は取らなかったのか? 
私は、原発事故当初2011年4月12日に厚生労働省医療食品監視指導麻薬対策課にあすか製薬の在庫品に放射線が検出されたという情報を同社から得たと電話をしていた。しかし、当時「ガイガーカウンターも不足しているし、放射線値が高ければ、連絡してくるだろう」と深刻視されなかった。
その時は、まさか、同社が損傷した倉庫から在庫品を取り出して出荷してしまう等という行動をとっていたことは知らなかった。その時、もっと慎重な対応を取ってくれていればよかったと思う。」と……。

  私の意見に対し、経済課総務係のS氏は「安全性に関してはは当課の管轄でないので何とも言えない。多分、その所管は先の監・麻課だ。原則的には、両者がチームを組んでやっていくことにはなっているが、当時の事情は担当者も移動になっていているし、書類としては残っていない。」と回答した。
前任者に尋ねて、収集してくれた情報のようだった。
ただ、安全性については経済課総務係の担当者は「もう少しチームで協力してやった方が、よかったかもしれない。」と付記した。

  この経緯から伺えることは、厚生労働省経済課の動きは、委託会社を含めて対策を講ずるようにと、あすか製薬に供給確保を指導している姿だ
が、結果的には、絶対量が足らず、厚生労働省経済課はサンド社に輸入を要請した。従って、輸入者はサンド社になっている。同省の要請については、はからずも、原発事故直後の日本医師会3月18日の通達に若干輸入の件に触れられている。「(中途略)厚生労働省の要請を受け、同一成分を製造販売しているサンド株式会社にも、レボチロキシンナトリウムの国内增産や輸入を検討しているということです。」すなわち、この時点でサンド社は、輸入の検討をしていたということになる。この(保242)Fの文書については、今年5月日本医師会医療保険課に経緯を確認した。調査結果、この文書作成にあたっては、厚生労働省から連絡が入った。そのニュースソースは厚生労働省で、その情報に従って書いた。いつかは不明だが、長期処方の自粛ということがメインだったし緊急事だったので、すぐ通達を作成して発進したと思う。」が回答だった。

  しかしながら、この緊急輸入製剤についての副作用対応の件は、あすか製薬が取ると言っている。あすか製薬は発売者にもかかわらずにである。 ここら辺がもう一つ分からないので、サンド社の薬相談室に聞いてみた。
「あすか製薬は、震災と原発事故でチラージンSが供給危機となっている。供給危機で日本の患者さんも危険に晒されている。厚生労働省にも要請されたし、事は緊急を要している。こういう状況下、サンド社は協力した。」という趣旨の回答をした。

  サンド社の立場は、最初からあすか製薬の代りに輸入したというのが言い分のようだし、背景はそうであったに違いない。すなわち、こういう状況を見かねてサンド社は輸入に協力したのだろう。輸入者名はサンド社になってはいるものの、こうした事情がなければ、サンド社は、何も緊急輸入する根拠がないのである。
現実に厚生労働省から要請もされたし、大震災による逼迫した供給事態下にある日本の患者のために協力すべく輸入に踏み切ったのが経緯ではなかったかと、最初、私は理解していた。

 
  こうしたサンド社の立ち位置を裏付けるかのように2011年4月1日、ロイター通信がこう報道している。
「あすか製薬が、放射性物質を浴びた際の甲状腺ホルモン剤「レボチロキシンナトリウム製剤」をサンド社(独)から緊急輸入する」と……。
表向き、あすか製薬、「輸入者はサンド社」と言おうが、この緊急輸入で誰にメリットがあるかという視点で考えれば、それはサンド社ではなく、あすか製薬だということが分かるだろう。危機に瀕していたあすか製薬こそ、本来緊急輸入を欲していた張本人ではなかろうか……私には、そうとしか思えなかった。

 傍から見ていたものの多くは、輸入者は「あすか製薬」と思っていたはずである。ゆえに、ロイター通信は、そういうニュアンスの記事を書いた。
「あすか製薬は、放射性物質を浴びた際の甲状腺ホルモン剤レポチロキシンナトリウム製剤をサンド社から緊急輸入する」と……。主語は、あすか製薬なのである。
すなわち、ロイター通信の目からも、同社が備蓄していた在庫品は、放射線を浴びたから出荷できなくなっている現状があることを示唆している。ゆえに、緊急輸入をする必要性を抱えているのは、あすか製薬であることも暗示している。

 サンド社には緊急輸入する動機はなく、その切迫した動機があるのは、他でもないあすか製薬であることを伝えている。(物事には、原因と結果がある。原因もない行動を、人は取らない……。ロイター社にしても、当該社が、その放射線物質を浴びた在庫品を出荷してしまったとは、夢にも想像していなかったろう。なぜなら、海外メディアは、福島県が相当量放射能に汚染されたことは知っていただろうから……。)
海外メディアが知っていて、厚生労働省がそのリスクを知らなかった等とは言い訳にもならないし、知っていて透明性のある緊急輸入ができなかったとしたら、その責任も同省にあろう。

■あすか製薬の株の動きも連動する

 
  2011年財経新聞という新聞は、あすか製薬の株について「1日の株価は小反落となり、終値は725円(16円安)。東北地方太平洋沖地震の発生前は好業績を背景に820円(3月3日)まで上げて2010年1月以降の高値に進んでいたが、大震災の発生により552円(3月16日)まで急落した。」と報道している。
学会も含め、緊急輸入の動きが何か変だと思い、あちこち検索した結果、この記事を見つけた。この記事を見て、経済や市況に弱い私も、キーワードは、ここにあったのかと合点がいった。
 

  ここに焦点を当てれば、まさに、今回の緊急輸入の背景には、株価が急落し会社存続の危機にあったあすか製薬の官民あげての救済プロジェクトの意味あいがあったことを暗示してはいまいか……
そういう疑惑さえ浮かび上がってくるのだった。少なくとも、客観的にはそのように見えるということだ。

  サンド社に緊急輸入を要請したのは厚生労働省医政局経済課であるということは、あすか製薬のニュースリリースにも書かれている。
2011年3月18日 日本医師会の通達にも記述してあった。(今年3月12日確認を取ると、厚生労働省医政局経済課も、その要請はしたことを確認した。しかし、今年4月サンド社から当時の事情を聞けば、この経済課前任者のコメントも、若干怪しくなってくる。つまり、同省の要請が先なのか、あすか製薬がサンド社を訪ねて行ったのが先なのかという微妙な謎がある。ここで、あすか製薬工場の立地するいわき市における放射線リスクが全くなければ、私はこんなことにすら関心を持たないだろう。しかし、いわき市は、放射線のリスク地であった。)

  原発事故当初、いわき市は一部屋内待避圏内があった。
現実に、昨年三月NKKのETV特集の報道で一万ベクレルという放射線プルームが2011年3月15日、真夜中頃から南に流れ、福島県南部から茨城、栃木、群馬へと流れていったということは、何度も述べた。
いわき市に、目眩がする程の放射線物質が降りたことは事実なのである。(2011年3月18日 いわき市平字梅本という場所で測定された雑草の放射線濃度は、ヨウ素690.000ベクレル/kg 、セシウム17.400ベクレル/kgというモニタリングデーターが文部科学省から出されている。しかし、これはいわき市のホームページに掲載されていない。これも何度も述べた。)

  こうした場所に立地するあすか製薬の製品の安全性に頓着もせず、とにかく、あすか製薬に供給の対策を取るよう指導した厚生労働省経済課の対応には、患者の立場から考えれば賛成し得ない。
患者の安全性等、何ら考慮されていない。(ロイター通信の記事にも書かれていたではないか……放射性物質を浴びた際の甲状腺ホルモン剤と……これは、あすか製薬の製剤を指している。)
あすか製薬の製剤は、放射線物質を浴びたのは海外メディアは知っていた。(それはなぜかと言えば……日本のSPEEDIが発表される以前、原発事故当初から、その拡散状態を観測していたからである。)

  時間が経るに従って、あすか製薬の意図がクリアになっていった。というのも、緊急輸入品は、ごく初期に一方的に終了してしまったからだった。
2011年8月末には、あすか製薬の在庫は3ヶ月位までの在庫を持つ程になり、供給危機は去ったからという理由で、さっさと中止した。もっとも、この件で、あすか製薬の4月7日のニュースリリースに但し書きが付記してある。
「臨時措置として、サンド社が当局から許可いただいた製品であり、国内製造による安定供給がなされた場合は、輸入品の供給は停止することになります。」と。

  しかし、緊急時とはいえ、自分が輸入者でもないのに、なぜ、あすか製薬は、こんな但し書きを付記するのか。
あたかも、自分が緊急輸入当事者であるかのような書き方ではないか。そして、その意味を通訳すれば「自社の供給が整ったら、一方的に停止しますから、よろしく。」 こうした意味に解釈できないか……。
供給が間に合えば、一方的止める? だったら、そこに関与する患者の安全性はどうなるのか? 
(車ですらガイガー検査をするのに、病人が飲む製剤なのに安全性も確認されないまま、60万人の甲状腺患者は、ただ黙っていろとでも言うのだろうか。)
 

  私は、再度、このニュースリリースをチェックしてみて不審感を深めた。
あすか製薬は、原発事故直後、いわき市の放射線リスクはどれくらいだったのか? という明確な数値を公開することもなく、4月22日のニュースリリースで抽象的な安全宣言を一方的にしただけだった。
この間、厚生労働省は、あすか製薬の放射線の安全等確認した気配もないままだった。今年三月厚生労働省経済課総務係の担当者の回答は、安全性の確認は所管が違うとのことだった。それは監・麻課だろうとの回答であったが、現時点では担当者も移動になり、経緯は分からないが、本来はチームを組んで対応すべきだったとも述べた。)
 
 

 そして、あすか製薬のシェアは、2011年八月には予定調和的に90%シェアを保持し得た。このシェアの数字は、患者の安全性等への配慮等何一つ考慮されないまま、あすか製薬のシェア保持が、成功したことを示している。
いわき市にリスクがあるのに、誰もそれに触れないまま、あすか製薬の既得権は持続された。

  先に記述した財形新聞がこの件に触れている。
あすか製薬は甲状腺ホルモン剤の大手。いわき工場(福島県)が東北地方太平洋沖地震の影響で生産停止となり、製造委託や輸入などの対応を進めていた。緊急輸入分が出回れば、出荷は大震災前の水準にほぼ戻る見通しという。そして、2011年4月1日のあすか製薬の株価は725円まで戻した。大震災の発生により552円(3月16日)まで急落した株価が、そこまで上がった。」
この記事は、当時のあすか製薬の危機感を言い当てている。

 
  究極的なキーワードは株価の急落だったのか……
あすか製薬は存続の危機に陥っていたから、何が何でも既得権を守りたかった。それが本音ではなかったか。(たとえ、患者の安全性等配慮しなくても、放射線空間線量の周知を作為的に掲載しても、損傷した倉庫から出荷してしまっても……)
存続の危機を脱したかった。たとえ、患者を犠牲にしても……薬事法スレスレのことをした。

緊急輸入に五学会の要請あった…サンド社の話

 当初、事態が混乱し、供給が切迫していたということもあったであろう。
しかし、それだけの問題でなく、確実に何等かのシナリオが書かれ、それに沿い、権限を持っている人間が動いたのではないかという疑惑も浮上した。

  もし、それが事実ならば、あすか製薬は、経済のために患者の安全性を売り渡したと同等の意味を持つことになる……。
 
震災で工場も倉庫も損傷し、あすか製薬は存続の危機を迎えていた。株価も急落し、大丈夫かという大方の株式市場の見方もあった。
あすか製薬は、見かけは発売者とうたっているが、株価のためにも、実質的には、輸入元の地位を保持しならなければならなかったのだ。なぜかと言えば、 既得権維持のためだ。この緊急輸入は、あすか製薬の生命線だったのである。
自社の既得権のために、たとえ患者の健康を犠牲にしても、なお、生き残ろうとしたのだろう。(このことは、ほぼ私の推測は当たっていた。しかし、後にサンド社から聞いた当時の経緯は、もっと衝撃的なものだった。)
 

 とにかく、あすか製薬が既得権のために緊急輸入のイニシャティブを握ろうとしたことは伺える。
製造し販売した当事者が副作用の責任も取らず、発売者が責任を取り、なおかつ、緊急輸入は限定的であることを発売会社があらかじめ、宣言するというのは変な形態である。(この件は、今年3月厚生労働省安全対策課に確認したが、当時のことは分からないとのことだった。)
 

  あげくの果に、学会まで「あすか製薬の供給窓口」に東奔西走した。あすか製薬の立地地が放射線汚染のリスクがなければ、たとえ同社が98%シェアでも、私はここまで拘らない。
放射線リスク地であることは多くの人に分かっていた。いわき市には一万ベクレルの放射線プルームは、通過した。しかも、同社は工場、倉庫ともに損傷し、立ち入り禁止状態になっていた。3月26日になって、やっと放射線を測るのである。

  にもかかわらず、関係官庁、学会一体になって他の方策を探すこともなく、この会社の供給に特化していく……この姿は変であろう。
3月15日には、福島県内でいわき市が、一番空間線量の数値が高かったモニタリングデーターは文部科学省から、既に発信されていた。にもかかわらず、安全対策課も監・麻課も動いている気配はなかった。(私の感触だと、むしろ、流通を止めないための縛りがかけられていたように思える。)
雑草のデーターは3月18日からなので、もはや、この時点で緊急輸入の要請はサンド社になされていたようだ。だとすれば、経済課の前任者は、本当に供給一辺倒で放射線のデーターのことは知らなかったのだろうか。(そうだとしても、福島県いわき市には、原発事故の影響は少なからずあろうと普通は推測するだろうから、その安全性を、まず、確認するという発想に何故ならなかったのだろうか……という疑問は消えない。)

  厄介なことに、いわき市も一番高い3月15日の空間線量のデーターを隠した。 高濃度の数値の雑草のデーターもホームページに掲載しなかった。
それゆえ、あすか製薬も、いわき市の低い放射線データーを根拠に4月22日安全宣言をし、日本甲状腺学会も「あすか製薬の放射線の影響はない」とした。こうして、架空の安全宣言は拡散していった。(しかし、私は2011年4月11日にあすか製薬薬相談室に連絡を取った時に、放射線は検出されたという情報は確認していた。あすか製薬は3月26日工場再開から、自覚的に損傷した倉庫から取り出した在庫品を、たとえ、放射線が自然放射線のレベルだとしても、出荷をしていたということになる。)

  このあたりから、私も、この会社の致命的ないかがわしさを予感すべきだったのかもしれない。しかし、私は、当時、患者という当事者だった。
そして、いわき市に雑草に降りたヨウ素690000ベクレルの数値を知っていた。そんな数値の下にある製薬会社の薬を飲まなければならない……そのことで、パニック状態にあった。事態は切迫していて、冷静さを書いていた。状況を客観視できていなかった。周辺に訴えても、多くの人は自分が飲む薬でもないので、真剣に対応してくれなかった。私は孤立感を深めていた。

  しかし、その後、2011年8月22日、あすか製薬は、微量であれ放射線が検出されていると、自らのホームページに掲載していた。にもかかわらず、その件にT4委員会も触れないまま、この98%シェアの企業の供給を進めるべく協力した。放射線による患者の安全性等を置き去りにしたまま……。

  しかしながら、こうした背景──こうした一連の不可解な動きのなかには、真実が寄り添う影のように張り付いている。
そして、不自然な形態には、必ず何らかの綻びがあるものだ。時間と共に綻びは、それは大きくなり、ある意味真実の姿を隠せなくなってくるはずだ。
あれから二年経って、真実は少しづつ形成されてくる……。

  このことを明らかにするためには、情報開示しかないかなと思っていた。
しかし、開示には時間もかかる。このねじくれた副作用の責任の所在について、当時のサンド社の当事者だったら、真相を知っているかもしれないと思った。知っていても、教えてくれるかどうかは不明だった。しかし、当たって砕けてみるしかなかった。(現在の状況では、あくまで私の憶測でしかない。憶測で、ものは書けない。裏付けが必要だった。)

  私は、然るべき部署を探し、サンド社の電話番号を探した。
しかし、サンド社の電話は、受注センターか薬剤相談室の記載しかなかったので、やむを得ず今年4月3日、サンド社受注センターへ問い合わせ、事情を話し然るべき窓口の電話番号を聞きたいと申し出る。間に入ったMさんが、あらかじめ私の質問事項を聞いてくれて、後に広報担当から連絡するからと手配してくれた。(前後の経緯は、先のブログでも触れた。)
 

 翌日4月4日 広報部担当者T氏から電話が入った。聞きたかったことは、なぜ発売者のあすか製薬が、副作用責任を取るのかということだった。
同社広報部のT氏は「副作用情報については、あすかさんにお願いした。薬事法でも、販売者に委託することもできることになっている。
この背景として、患者さんの利便性も考えると、シェアを98%担っているあすか製薬さんに担当してもらった方がいいのではないかと同社と検討し、厚生労働省に対して提案するという形になった。あすかさんとは、緊急輸入が決定した直後、一週間位の間に契約書も結んだ。厚生労働省とは承認書という形でしている。書類も交わしている。」とのことだった。
 
 
 

  緊急輸入の件を決定した理由については、「厚生労働省もいろいろ関連しているし、安定供給対策委員会や日本甲状腺学会、その他の学会からも要請があった。」とその背景を説明してくれた。(安定供給対策委員とはT4委員会のことである。)
私は「緊急輸入をサンド社さんが検討しているという情報は、日本医師会の3月18日の保(242)Fに掲載されているので、震災が起こった3月11日から、時系列に並べると、その一週間位の間位にか?」と確認した。
すると「その位だったと思う。あすかさんが、直接本社にやってきて依頼された。あと、五学会から、文書とか電話で重ねて要請を受けた。」と、その背景を説明してくれた。

  が、私はあすか製薬、4月7日のニュースリリースで、「この輸入品は安定して供給可能になるまでの臨時措置として、サンド社が輸入することを当局から許可いただいた製品であり国内製造による安定供給がなされた場合は、輸入品の供給は停止することになります。と通告している。これでは、緊急輸入製剤は、あすか製薬の供給が間に合うまでの緊急措置であった様に解釈ができるが……。」と問うと、サンド社のT氏は「そうです。」と言った。 

  私は、当初のいわき市の雑草の高濃度のデーターを伝え、いわき市の放射線は決して軽微な汚染ではなかった旨報告し、「そうした背景があるにもかかわらず、なぜ、学会があすか製薬の安全性に何ら配慮もなく、供給ばかりに奔走するのか、患者という立場では納得がいかない。」と伝えた。
サンド社の担当者T氏は「学会のいろいろな情報を調べてみたが、話の中心は供給の事が多かった。」との回答だった。同社T氏は、いわき市の放射線のデーターについては、初耳だったようでコメントしようがないとのことだった。
あすか製薬の立地するいわき市は、放射線は高く、雑草には驚くべきデーターが文部科学省から出されていたが、いわき市はそれを掲載しなかった。こうした背景から私は、あすか製薬の製剤に危惧を抱いたが、学会も関係官庁も、皆で供給一辺倒になった。
あの時、安全なのは緊急輸入製剤だったと思う。にもかかわらず、輸入者でもないあすか製薬が、自社の安全性は伏せたまま、一方的に、緊急輸入を一回で打ち切りにしたことは、患者としては不本意だった。
少なくとも、あすか製薬は汚染リスクのある県に立地していたのだから、五学会も安全性を論議してもらいたかった。ともかく、この緊急輸入に放射線問題があるにも関わらず、安全性が全く論議されないまま、緊急輸入が実現して、あすか製薬ペースになってしまっのは、残念だった。」と伝えた。
 

  一任意団体の日本甲状腺学会は、輸入の要請まで、現実にサンド社に働きかけていた……ということが分かった。私の疑問は事実だったのだ。
あすか製薬は、この緊急輸入で自社の供給が間に合うまでの時間稼ぎをしていたことも事実だった。ということは、まさにこの緊急輸入は、あすか製薬の輸入であり、そのためにのみ存在していたのだ。
サンド社は、直接あすか製薬に依頼され、関係官庁、並びにT4委員会日本甲状腺学会その他四学会からも重ねて要請されたため、緊急輸入に助力した。それが、事実だった。

 やはり、日本甲状腺学会は、この緊急輸入をあすか製薬の既得権を維持すべく誘導していたのだろう。
サンド社は、まず、あすか製薬に直接依頼され、深刻な供給不足を訴えるT4委員会、ならびに、日本甲状腺学会を含む五学会からも、電話や文書にて要請されたため、緊急輸入を実現すへく決意したようだった
日本のレボチロキシンナトリウムの致命的な供給不足に理解を示した結果であったろう。様々なところから要請されたし、震災によりレポチロキシンナトリウム製剤の供給が危機に瀕していることに対して、人道上協力したことが分かった。その背景と経緯が、はっきり確認できた。(サンド社のスタンスは、先に、私が想像していた通りだった。サンド社はグローバル展開をしている世界的企業である。今回の震災で自社には被害等なかった。緊急事態でもなければ、何もあすか製薬の手伝いのために緊急輸入などする意味がないではないか……。現実に、製剤の調整等の準備も大変だったようである。)

  患者が、供給不足の危機に晒されている……五学会は、おそらく、そう危機を煽り、あすか製薬が緊急輸入のイニシャティブを握っていられるよう援護射撃をしたのではなかったか
確かに、供給は危機だった。しかし、安全性だって危機だったのだ。安易に供給一辺倒に走れない程に……
放射線は、いわき市に大量に飛んだ。(患者の視点に立てば、安全性に配慮して、緊急輸入は、政府がイニシャティブを握ればよかっただろうにと思う。)

 

■不可解なことの裏側

 
 サンド社への問い合わせで、真実はかなり明白な姿を整えた。あすか製薬と日本甲状腺学会の関係は、明らかに特殊である。
しかし、なぜ、そんなことをするのかは分からない。しかし、不可解な行動には、必ず何らかの裏があるはずだ。つまり、こうである。震災だけなら建て替えれば済む。しかし、原発事故は、いわき市も襲った。株価も3月16日急落した。あすか製薬は追い詰められた状況になった。工場も倉庫も損傷し、立ち入り禁止までなった。緊急輸入の外国産が大量に入荷すれば、下手をすると、シェアのすべてを失いかねない。
緊急輸入製剤の輸入窓口を、国から遠ざけておく必要があったのではなかろうか。(その後の経過は、あすか製薬の思惑通りになった。同製薬はシェアを失うどころか、未だ90%シェアを保持に成功している。)
  

 あすか製薬が依頼したのか、日本甲状腺学会が自主的に動いたのかは分らない。しかし、チラージンSを作るあすか製薬は、日本甲状腺学会とは、長年の付き合いだろう。(なぜなら、この企業がシェアを、ほぼ独占状態だったからだ。)
山下氏は、長年の付き合いのあすか製薬を潰すわけにはいかなかったのではないか。(現実に原発事故後、あすか製薬のチラージンSの広告が、日本甲状腺学会に貼り付けられた。これは研究費でも増額したというお礼の旗印なのであろうか。)

  日本甲状腺学会山下俊一理事長にとっても、供給窓口を自分の手元に置いて置くことで、いろいろな意味でメリットがなくはなかったろう。
今後、被曝による甲状腺ガンが増えることを考えれば、チラージンの販売量は増量するに違いない。その既得権確保は軽視できない問題でもあろう。もっと憶測すれば、ガンの創薬との関わりもなかったとは言い切れまい。

  あすか製薬の株主でもある武田製薬工業は、ガン創薬に踏み切っている。(また、山下俊一氏は、原発事故後、朝日ガン大賞を受賞している。製薬会社は、がん創業の広告塔にすべく山下氏を選んだという説もある。このことは、福島県立医科大学の動きとも連動するのだ。)
こんなふうに憶測すれば、謎の方程式は若干は、解けるように思われる。
 

 現実的経過として、山下俊一氏の指揮の下に関係五団体の理事長の承認でレボチロキシンナトリウムの窓口設定は事実決定され、60万人の甲状腺患者の命は、彼らに握られた。
情報提供の窓口と称しながら、T4委員会もサンド社に緊急輸入の要請をしていたそうだ。安定供給という大義名分の旗を掲げながら……。(無論、それも緊急の深刻な問題であったろう。問題は、原発事故当時、T4委員会が、いわき市の放射能汚染値を知っていたかということになる。)
 

  この後、山下俊一氏は知事に請われ、福島県のアドバイザーとなり、福島県立医科大に迎えられ副学長、2011年5月27日「福島県民健康調査検討委員会」の座長として、その権限を掌握しきっていくことになる。
そして、山下氏が、緊急輸入製剤の窓口のコントロールについて、患者の安安全性よりあすか製薬の既得権維持に奔走したという意味で、今回の原発事故の被曝者への対応と似ている。

  一種相似型にすら見える。すなわち、患者の方は既得権維持という経済性そして被曝者の方は国際的「疫学的」成果を達成する野望のためにである
私が、長々とこの件に固執して書いてきたかと言えば、この甲状腺及び内分泌関係学会が「福島県民健康調査」にも関連学術学会として関与しているとことだ。原発事故直後からのT4製剤すなわち甲状腺ホルモン補填材の供給の初動対応と同様な関わりを持っているように見えるからなのだ。

  私が、これらの関係五団体の行動に初動対応から抱いていた若干の疑義は日を追うにつれ姿を整え増殖し、その行動の行き先が、何らかの企てに向かって集約されていくことを意識する。
先にも触れたが、あすか製薬のホームページには最近、欧米で臨床第Ⅲ相試験を実施している抗悪性腫瘍薬の抗腫瘍効果増強剤を研究している旨も掲載されている。さらに、その背後には、あすか製薬の販売を担っている最大手製薬会社武田製薬工業の存在が控えている。(武田製薬工業は、あすか製薬の7,21%の主要株主である。そして、社長は、経済同友会の会長である。)

  武田製薬工業も原発事故後、アメリカの会社を買収し、抗がん剤の創薬に急発進中であることは、日本経済新聞2011年12月21日で報じられている。
すなわち、「武田製薬工業は、がん分野に強い米ベンチャーのインテリキンを買収することを発表した。150億を投じ2012年1月に完全子会社化する。抗がん剤の新薬候補を拡充し、がん事業の強化につなげる」としている。そこには、こう付記されていることは注目すべきことだ。すなわち、今後の市場拡大が見込める抗がん剤の事業シフトを急いでいる。

  こうしたことも背景の一つとは言えないだろうか。
残念ながら、原発事故により、甲状腺ガンが増大することは予測された未来だ。しかも、そう遠くない未来……そして、この甲状腺ホルモン製剤すなわちT4製剤は、そうした患者にとって命綱の薬となろう。そして、製薬会社は、患者が増えれば増えるほど利益が上がるのである。
あすか製薬の株も、こうした絶対的不幸を背景にしながら、おそらく上がるのであろう。
 

  長年の付き合いでのあすか製薬を潰さない……研究費や学会維持の助成金のために?(この件については、推測でしかないが、世の中多くには、製薬会社と学会の密着は、よく話題にされる。まして、98%である。それはあすか製薬と築いてきた自分の利権の保持ということもあるのかもしれない。)
地味にコツコツ築いてきた内分泌関係の学会の既得権を、他の医学団体にほんの少しでも渡すまいとする争いでもあるのだろうか。(ゆえに、県外の被曝者調査も五学会の関係機関で集約しようとする動きを感じる。その動きは執念のようなものさえ感じる。しかし、それは医療ということからは、どんどん離れていく行為になっていることに、五学会は気付いているだろうか。)
今回の緊急輸入にまつわる山下氏の動きは、原発事故後のイニシャティーブを握るスタートラインだったのではなかったかと私は推測するのだが…。
 

 原発事故は起きてしまった。そして、多くの被曝者が出た。
このどん底の悲劇の上に乗り、様々な利権が絡み画策している輩がいることだけは事実のようである。

 
■鈴木眞一氏も甲状腺学会の監事である


  甲状腺患者と一件直接な関わり合いはないように見えるが、日本甲状腺学会の監事でもあり、原発事故後山下俊一氏と行動を共にしてきた鈴木眞一氏にも少し触れておかなければならない。(山下氏日本甲状腺学会の理事長、鈴木氏は監事である。)

  おそらく、二人は福島県立医科大学に山下氏が副学長として招かれる以前から、同学会の役員として仕事をしていた同僚であろう。
原発事故をキッカケに山下氏は福島県入りをし、佐藤知事から福島県のアドバイザーに任命された。もしかしたら、既に福島県立医科大学の教授だった鈴木氏のつてで、同大学に招聘された可能性もないとはいえない。)
それは、鈴木氏が福島県立医科大学の教授であり、かつ、これから福島県で起こるであろうことのエピローグのような人物であろうことが推察されるからである

 現在、鈴木眞一氏は甲状腺外科学会の理事長に上り詰めた。
鈴木氏は日本甲状腺学会の監事でもあり、福島県立医科大学の教授でもある。原発事故後、山下俊一氏と行動を共にしてきた。
甲状腺患者としての直接的接点はないが、今後予測される放射線による甲状腺がんの多発によって、チラージンSという薬との結びつきを確認できるのである。(甲状腺機能低下症も増加するだろうし、今後一番危惧さけるのは被曝による小児甲状腺ガンの多発であろうことが想定されるからだ。)

  環境省の第二回2012年7月19日懇談会には鈴木眞一氏も、「福島県民健康管理調査における甲状腺超音波検査について」というテーマで講演を行っていた。
ここで、鈴木氏は自ら編集に関わったとされるガイドブックを画面に披露して説明をしていたが、致命的なミスをしていた。いや、確信的隠蔽をしているだけかもしれない。少なくとも、そこにいた委員に正確でないデーターを語っていた。

  鈴木氏は、ここで「小児甲状腺がんは、成人と比較して長期の生命予後は良好である。」と言っていたが、(これは市民と科学者の内部被爆問題研究会も指摘し質問状も提出している。そこでも、甲状腺腫瘍ガイドライン2010版を引用して、放射線がん発症のAランク)として記されている。
 
確かに、甲状腺腫瘍ガイドライン2010版には「予後が良いというのはX線やチェルノブイリ原発事故後のガン以外のものが対象となる。」と記載されている。なぜ、鈴木氏は、そこに触れなかったのか……

  山下俊一氏の2009年(チェルノブイリの調査)報告での発言は、こうである。「放射線誘発性の甲状腺がんはすべて乳頭がんで、大人と異なり、小児甲状腺がんの約4割は、この小さい段階(超音波で甲状腺結節を見つけて、1センチ以下、数ミリの結節の事)でみつけても、すでに局所のリンパ節に転移があります。」
こう発言しているのは他ならぬ山下俊一氏本人なのである。そして、その人が「福島県民健康調査検討委員会」の座長であった人なのである。

  2009年までチェルノブイリの報告の論文で「1センチ以下、数ミリの結節の事)でみつけても、すでに局所のリンパ節に転移があります。」と記述している人物が、過去に発言したことを翻して反対のことを言っている。
鈴木氏も、この甲状腺腫瘍ガイドライン2010版にX線やチェルノブイリ原発事故後との例外があることを外科医として知らない訳はなかろう。(なぜなら、このガイドラインの編集にも自ら関わっているはずだからである。)
  

  鈴木氏は、昨年日本内分泌外科学会の理事長になったことは述べた鈴木氏は外科医で超音波学会の福島県の専門医でもある。原発事故以前から、山下氏日本甲状腺学会の理事長でもあり、鈴木氏監事であり学会運営を担う役職にいる。

 こうした中、本年2013年2月6日 山下氏は長崎大に復帰し、福島県立医科大学は常勤から非常勤になったためか「福島県民健康調査検討委員会」のオブザーバーだった福島県医科大の鈴木眞一氏は、責任者となった。(今年、検討委員会は大幅に委員は入れ替わり、座長は社団法人福島医師会常任理事の星 北斗氏がなった。一見、刷新がはかられたかのように見える。しかし、事務局は、旧メンバーに変更はなさそうである。そして、新メンバーには、日本甲状腺外科学会の清水一雄理事長を送り込んでいる。この学会は、鈴木氏が理事長を務める日本内分泌外科学会と理事等を兼ねる双子学会である。清水氏日本甲状腺学会の理事でもある。ある意味、この人選も山下俊一氏のシナリオ上にあることが推測される。このシナリオを書き、山下氏は「検討委員会」の座長を退いた。医師会の抱き込みも、山下氏の指示らしい。Our Planetというサイトにマネージャー会議なるもののペーパーを掲載していた。それを読むと、驚くべきことが書いてある。山下氏が完全に政府の窓口になっていて、医師会のメンバーを委員に取り込むよう人選するように指示まで出している。いずれ訴えられた時のために、賠償保険まで掛けておくよう指示している。しかも、その掛金は国から、すなわち税金から出させるよう画策している。そして、数ヵ月後、現実はその通りになった。すべて、学長と副学長会議での山下氏の提案だったようだ。100mmシーベルトのこの人物に、患者も被曝者も引っ張られるのだろうか。この詳細は別枠で、また触れようと思う。)

 本年2月の福島民友の記事で山下俊一氏が、福島県医科大学を常勤から非常勤になり長崎大学に戻ることになった旨報道があった。(これで山下氏は表舞台から去ったかに見えるが、どうだろうか。これまでのルート作りは山下氏がシナリオを書いてきた。T4製剤の緊急輸入の折にそうしたように、堅牢なレール作りの基盤が大事なのであり、それができれば、それを強引にでも周知させていくことは、改革の苦手なこの国では容易なことなのかもしれない。
表舞台での発言は目立つが、影に回わり水面下に潜れば、かえって目立たない分、影響力をより浸透させ得るとも考えられる。今までの経緯から彼が「疫学」研究の被験者たちを簡単に手放すはずもなかろう。現実に、福島県立医科大学の構想では、長崎大学は共同研究の大学に入っている。山下氏は日本甲状腺学会の理事長であり、日本内分泌学会の理事でもあり、非常勤であれ福島県立医科大学に所属している以上、多くの人脈を張り巡らしているのだから、その情報網を駆使してほしいものを手に入れるだろう。)
 

  原発事故当初は山下俊一氏の名前が、Mr.100ミリシーベルトとしてインターネット上に踊っていた。しかし、今や、鈴木眞一氏は昨年2012年6月10日本内分泌外科学会の理事長まで上り詰めた。(事務局は福島県立医大になっている。が、このことはマスコミも余りコメントされていない。先にも言ったが、私は甲状腺疾患を持った患者であり、原発直後から、甲状腺ホルモン補填剤供給について情報を追いかけねば仕方なかった。こうした経緯から、日本甲状腺学会の名前を知り、後にその理事長が山下俊一氏、そこに監事として鈴木眞一氏の名前を見つけていた。しかし、その頃は、山下氏の方が、マスコミの露出度は高かった。)

 「福島県民健康管理調査」に拘るが、なぜ、関係学術団体だけで情報を取り囲むのか……。その背後に国が関与していることは今や周知の事実になってきている。
もっと意地の悪い言い方をすれば、こうした関連団体を通じて、被曝関連事業者は大忙し……活況の体をなしている。
例えば、社団法人超音波学会――ここは昨年9月超音波講習会なるものが400名もの募集をかけた。
おそらく、これは福島県以外に避難している被爆者の検査に必要なスタッフを揃えるためだろうが、この甲状腺検査にあたる業者としてNPO「日本乳腺甲状腺超音波診断会議」が入札された。
が、ここにも鈴木眞一氏が所属している。(市民と科学者の内部被爆問題研究会は公開質問状のなかで、鈴木眞一氏は、甲状腺部門の委員長を務めていることを指摘している。さらに、このNPO「日本乳腺甲状腺超音波診断会議」の入札についても、他に何件位の入札があったかを問いかけている。)
 

  というのも、同NPOが全国展開をすれば、その情報のすべては福島県立医科大学に集まって来ることだろうし、そうなれば、研究対象者の尊厳もなにも無いに等しいではないか。まるで、被験者の捕獲網を設定して、そこにすべての被曝者を誘導しているように見える。 (人権も尊厳も口先だけ。ルートは抜かりなく設定され、被曝者はそこに追い込まれるだけだ。自分に何の責任もないのに……。)
 

  この制度を一年半余かけて作ったのが、山下氏と鈴木氏であろう。二人は福島県立医科大学で同僚であり、それ以前から、日本甲状腺学会の理事長と監事という役職にあり密接な関係であったろうと予測できる。「福島県民健康管理調査」も二人でやってきた。
ちなみに、鈴木眞一氏は、社団法人日本超音波学会の専門医であることもインターネッで確認した。

  全国専門医一覧の中から福島県をクリックすると福島県医科大の鈴木眞一氏の名前が出てくる。
すなわち、鈴木氏はNPO「日本乳腺甲状腺超音波診断会議」(ここは現在は日本乳腺甲状腺超音波学会と改名している。電話で経緯を確認すると、前から決まっていた事だったが、タイムラグがあり、入札前後に東京都からの許可が降りたとの説明があった。しかし、学会と名乗っていても、NPO法人であることには変わらないらしい。)の甲状腺部門の委員長でもあり、「社団法人日本超音波学会」の専門医でもあるということになる。
鈴木眞一氏は表面的にせよ、「福島県県民管理調査」の一人者としてスポットがあたった。

 
■鈴木眞一氏は今やキーパースンである

  昨年六月日本内分泌外科学会の理事長に上り詰めたことは、先に書いた。その他、日本甲状腺学会の監事、日本甲状腺外科の理事、日本内分泌学会の評議員と関係5団体のうちの四団体の役員を勤めている。言い方は失礼だが、まるで、各親戚団体のコーディネーター役の様にさえ見える。(各五団体は、互いに、「福島県民健康管理調査」のリンクを貼りつながっている。そして、これを依頼したのが厚生労働省と文部科学省であることを小児内分泌学会のニュースリリースに記載されている。)

  鈴木氏は、多彩な肩書きを持っている。
福島県立医科大学教授(器官制御外科学講座・乳腺内分泌甲状腺外科)に始まり、放射線医学県民健康管理センター甲状腺検査部門長、福島県民健康管理調査検討委員会オブザーバー、福島県災害医療調整医監である。  鈴木氏は、これ以外に日本外科日本臨床外科医学会、系連合会、日本家族性腫瘍学会、日本内視鏡外科学会、日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本人類遺伝学会、日本がん転移学会、日本臨床腫瘍学会集団に加入しているようだ。

  これは鈴木氏自らのサイトに掲載しているものを羅列しただけだ。(自ら公示しているので、ウェブ上で誰でも検索できる。)
その所属の意図は不明だが、ここまで所属学会の多い人を余り見かけない。ただ、推測できるのは、その人脈は広いのだろうなということだ。
(余談だが、鈴木氏の出身校は福島県立医科大である。)
 

  鈴木氏が、日本内分泌外科学会の理事長まで上り詰めたことは、すでに述べた。そして、繰り返すが、日本甲状腺外科学会の理事長も平成23年10月8日から神の手を持つと言われる甲状腺がん手術のパイオニア、日本医科大学第2外科出身の清水一雄氏に変わっている。(この人物が、福島県民調査検討委員会の委員になった。)

  この二学会は共同で学術誌まで一緒に編纂した。
この2学会の間で、鈴木氏が理事長の日本内分泌外科学会では、清水氏監事である。そして、清水氏が理事長の日本甲状腺外科学会には、甲状腺腫瘍診断ガイドライン作成委員会は両学会共通だか、その編集委員として鈴木氏の名前がある。

  日本内分泌外科学会の理事は、伊藤病院の院長伊藤公一氏、岡本高宏氏は日本甲状腺外科学会においては、監事である。
両学会は、各委員会も共通で備えている。このように重複する役員人事というのは、他でもあるのだろうか。
私には、双子の学会のように見えるのだが……。
 

  もとより、日本甲状腺学会の理事長は山下俊一氏である。そして、この学会において鈴木眞一氏は監事をしているし、清水一雄氏は理事なのである。さらに、前日本内分泌学会の理事長だった森氏も、理事として参画している。小児内分泌学会理事長の横谷進氏は、評議員である。山下氏は、日本内分泌学会の理事でもある。役員が、かくも横断的にその権限を握っている以上、何かを取りまとめるのはまさに、簡単ではないか。
内分泌外科医から甲状腺外科医、内分泌内科医、小児内分泌医まですべて、この日本甲状腺学会でまかなえるのである。そうした第一線の専門家集団の集まりなのである。それゆえに独走態勢の危険性もも孕んでいると思えるのである。

  ここに所属する学者は、研究者としては第一人者ばかりであろう。それゆえ、多くの人はその判断を仰ぐ。しかし、だからといって、患者や被曝者の人権や安全を無視して突き進んでいい訳もなかろう。(おそらく、当人たちに、その自覚はないのかもしれない。)
自分たちは医学のプロと自認し、それだけの実力もある研究者・医師なのだろう。しかし、それゆえの統一見解は危険なのである。
まして、医学、科学のことである。それゆえに、その理論に齟齬があってはならないだろう。(私の素朴な疑問は、これ程の医師、学者を集めながら、なぜいわき市の放射線汚染の薬に与える影響を若干であれ、考慮してくれなかったのかということである。別に、緊急輸入はあすか製薬に限定することなんかないではないか……。もっと、透明な公的形で輸入をすればよかったではないか。なぜなら、あすか製薬は損傷していたし、国際基準にまで復原するには時間が必要だろう。)

  前に戻れば、鈴木氏は、甲状腺腫瘍ガイドライン2010版にX線やチェルノブイリ原発事故後との例外があることを、いつ口にするのだろうか。環境省の懇談会でそれを口にしないということは、誰を欺いているのだろうか。
(環境省は国の機関である。国の機関であるということは、国民の機関でもあろう。そこで、事実と正反対の事を発表する……そのことは国民を欺くことだ。しかし、この会議自体が、単なる国民を欺くためのパフォーマンスだとしたら、単に、この嘘の論理を国民に周知させるべく設定された懇談会だとしたら? わざわざ欺くために設定された舞台だとしたら? これはどう考えるべきなのか……頭が混乱してくる。)

  今回の原発事故の被曝者は、みんな被害者である。
まして、子供達においては、国からヨード剤も与えられなかった。ある種、日本国の大人全員が加害者でもあろう。
 
福島原発事故の被爆の因果関係を認めないまま調査をしても、何のための調査なのか。同調査は、福島県立医科大学倫理委員会において受付番号1319とナンバリングされた「疫学研究」と決定されている。(私は、その情報をインターネットで検索し、プリントアウトした。)
それとも、環境省が疫学研究を国に引き取り、「国の調査」と変更するのだろうか。(これは福島県が行なう調査であることは、環境省は認めた。)

  チェルノブイリと比べて、福島第一原発の線量が、高かったか低かったか素人には分からない。しかし、被爆をしたことは被曝者の意志ではない。不可抗力であり、実に不本意なものである。しかし、福島県民ないし隣接県で不本意に放射線被曝があったことは事実であ。ガンと診断されれば、その進行は大人に比べ早いとなれば、誰が考えても検査のスピードアップを上げ、子供たちに医学的治療を施さなければならないことは予測できるであろう。
「疫学研究」の前に治療であろう。
 
6月5日第11回検討委員会が開かれた。Our PlanetTVではその全録画を流した。記者会見の席で、清水一雄氏も穏やかな口調ながら「若い人より、高齢者の方が進行が早い。」と言っていた。それは一般論だ。しかし、自らが作成した甲状腺腫瘍ガイドライン2010版(X線やチェルノブイリ原発事故後との例外がある)の例外を口にしなかった。子供の甲状腺ガンの進行は早いにもかかわらず……。
かくまで執念深く「疫学研究」の下に、子供たちの命を人質に取る……そう画策するモチベーションは何なのか。

  鈴木氏も、真実を語る口を開こうとしない。それは福島県同医科大学の意思か? それとも国の意思か?
 
いずれにしても「福島県民健康管理調査」が今後も長期間に渡って続いていく以上、鈴木氏がいろいろな意味でキーパースンであることは間違いないであろう。
鍵は、甲状腺外科に移行した。それは、ある意味、体制はガン対応に少しづつ備え、それが表面化していくX年の現実化を示唆しているのだろうか。



つづく
 

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2013年5月 1日 (水)

甲状腺患者から見えた原発事故--患者としての体験(16)

      「T4委員会」の設立の裏側のキーワード  

  昨年2月原発直後の甲状腺調査で、甲状腺被曝が一番高かった子供がいわき市の子供であったことを知り、私はサイドいろいろな検索を始め、小児内分泌学会のメールニュースというものを発見した。
 
これは小児内分泌学会から2011年3月22日に発布されたT4委員会設立の経緯を記載したメールニュースである。

 これに沿って見ていけば、98%シェアのあすか製薬のチラージンSの供給の窓口が誰によって決められ、いかに透明感のない決定経緯であったかが分かるので全文掲載する。まず一読、願いたい。(ポイントは私が太字にした。)

________________________________

レボチロキシンナトリウム安定供給対策委員会(T4委員会)の設立と活動について

                                         T4委員会

                          
                            横谷進、 原田正平、皆川真規

「東北地方太平洋沖地震に関わる小児甲状腺疾患診療プロジェクトチーム(震災小児甲状腺PT)」が3月17日に発足し、「甲状腺ホルモン薬の供給問題」も重要課題のひとつとなっていますが、この問題は一学会に限られた問題ではなく、当該製薬会社、厚生労働省、関連学会など多くの関係者が存在していることから、震災小児甲状腺PTとは別組織の「レボチロキシンナトリウム安定供給対策委員会(T4委員会)」が問題解決に当たることになっています。
このT4委員会の設立の経緯とこれまでの活動報告を致します。

 今回の地震により福島県いわき市にある「あすか製薬株式会社(あすか製薬)」のいわき工場が被災し、津波やその後の東京電力福島第一原子力発電所事故対応などの影響(直線距離で約50km超)で、操業停止が続いていました。あすか製薬はレボチロキシンナトリウム(T4製剤)の国内シェア98%を占め、しかもいわき工場1箇所で生産していたため、早期の供給再開が重要な問題となりました。
 この間、全国保険医団体連合会が「チラーヂンS の緊急輸入・海外支援要請を緊急に求める」要望書を政府に提出(3月16日)するなどの動きはありましたが、関連学会の連携は未だありませんでした。
 3月17日にドイツのボランティアよりのT4製剤提供という申し出があり、日本甲状腺学会でその対応を検討した結果、同学会小児系理事である原田委員が窓口となって、日本小児内分泌学会、日本甲状腺外科学会とワーキンググループを作るという提案が、山下俊一・甲状腺学会理事長よりなされました。それをうけ、横谷進理事長が他の関連学会(日本内分泌学会、日本内分泌外科学会)の理事長とも相談して、たんに外国よりの輸入窓口になるのではなく、T4製剤の安定供給対策を包括的にとりまとめる組織の設立を提案し、それが5学会理事長(※)に承認されて、レボチロキシンナトリウム安定供給対策委員会(T4委員会)設立となりました(3月18日)。
(※)関連学術5団体:日本内分泌学会(森 昌朊理事長)、日本甲状腺学会(山下俊一理事長)、日本甲状腺外科学会(高見 博理事長)、日本内分泌外科学会(高見 博理事長)、日本小児内分泌学会(横谷 進理事長)


 日本小児内分泌学会では、T4製剤不足の問題が公に明らかになる以前に、震災小児甲状腺PTの立ち上げを始めていましたので、役割の重なりを避け、かつ迅速な対応をするため、T4委員会をT4製剤の安定供給に特化させ、横谷理事長と原田委員が所属する国立成育医療研究センターを事務局とし、震災小児甲状腺PTのリーダーである皆川真規小児内分泌学会理事を委員に加える体制としました。
 その後は、T4委員会があすか製薬との情報共有の窓口となり、5学会に情報提供を行い、現時点で4月中旬とされる供給再開時期まで、T4製剤の不足を起こさないよう、長期処方の自粛及び分割調剤の勧め、新生児、乳幼児などへの優先処方の依頼などを5学会を通して呼びかけています。


                                                                                                                                                 以上

________________________________


 冒頭に触れたが、この文書を改めて見ていくと、3月16日、原発事故直後全国保険医連合会から内閣総理大臣と厚生労働大臣宛にその要請があった。
その内容は、以下のような内容だった。
あすか製薬の被害に言及しチラージンSの供給のメドが立っていない中、「この危急事態を踏まえ、海外からの緊急輸入と海外への支援要請が喫緊である。一刻も早い政府の行動と、その際の関税や薬事承認などの緩和など、超法規的措置が肝要となっている。政府・関係方面の英断を要請する。」
自然に読めば、政府はこれに従って緊急輸入を実現してくれればよかっただろう。すなわち、行政機関である厚生労働省が、所管官庁として遂行すべき仕事ではなかったか。しかし、実際は、そうはならなかった。



 
■ドイツボランティア団体からのT4製剤提供について


 
 「3月17日にはドイツのボランティア団体からT4製剤提供という申し入れもあった」と、先の日本小児甲状腺学会のニュースリリースは綴っている。
先の文書では「日本甲状腺学会でその対応を検討した結果、同学会小児系理事である原田委員が窓口となって、日本小児内分泌学会、日本甲状腺外科学会とワーキンググループを作るという提案が、山下俊一・甲状腺学会理事長よりなされました。」と記載している。

  この3月17日のドイツのボランティアからのT4製剤提供という案件についても、日本甲状腺学会が検討するのである。
(この件は、今年3月12日厚生労働省経済課の情報開示サービスは「その件は知らないし、分からない。」と回答した。
だとしたら、ドイツのT4製剤提供という善意は、その後どういう経緯をたどったのか……それは、どれくらいの量があり、それを誰が受けたのだろうか。
その疑問を、私は、小児内分泌学会に電話をしたが、文書にてほしいというので、文書にとりまとめ、3月25日ファックスした。
 

 3月28日付の回答を受領した。それによれば、ドイツのボランティア団体からT4製剤提供という申し入れという件については、極めて個人的レベルの次元の問題だったようだ。
文面を要約すると、この件に関しては、「直接の窓口になったのは、日本小児内分泌学会評議員でもあり、日本甲状腺学会小児担当理事でもあった原田正平氏の知人を介してのものであったということであった。原田氏が、この事実を日本甲状腺学会理事長すなわち山下俊一氏に伝えたところ、同理事長より東京にその受け皿を関連団体で作ったらどうかという助言があり、日本小児内分泌学会の横谷進理事長が中心となった動きが始まり、最終的にはT4委員会結成とつながった。」と記述されている。

  その後は、ドイツ国内の詳細な動きは分からないものの数千錠集められるという情報もあったという。
 
しかし、実際に海外からの薬剤提供の申し出について、公式に受け入れを行う場合、薬剤の品質管理、国内での供給経路の確保等多くの解決しなければならない問題があり、学会のような任意団体において可否を判断できるような事案でないため、またサンド社の3月19日にはドイツよりの緊急輸入のめどがたったため、ボランティアベースでの支援は必要ないことをドイツの知人に伝え、そちらも了解したとのことであった。

  結局は原田氏の知人の元に届けられた、たった100錠だったとかで、実にパーソナルな事象でしかなかった。
公的な小児内分泌学会から発表されているメールニュースに掲載されているので、もっと意味の深いことかと思っていたので気抜けした。
(私は、元T4委員会委員長であった横谷進氏に回答を依頼し、当初のいわき市の雑草のデーターにも触れ、あすか製薬から放射線が検出された旨自社のホームページに掲載している点についても記述し、案にコメントを求めていたが、その件での回答はなかった。)


 
  
■ワーキンググループを作ったのは山下俊一氏

 そして、山下俊一・甲状腺学会理事によって、同学会小児系理事である原田委員が窓口となって、日本小児内分泌学会、日本甲状腺外科学会とワーキンググループを作るという提案がされるのである。
 
 
(この件でも、厚生労働省経済課の情報開示サービスにおいて、前任者は、こうした動きを「知らない。」と言ったそうだ。だとしたら、このT4委員会の位置付は、どうなるのだろう。ボランティア活動のようなものであろうか。情報サービスを引き受けてくれた厚生労働省経済課総務係の担当者は、「いろいろな動きはあったと思う。」とは言っていた。しかし、再度今年5月末確認したところ、こうした動きを知らないと回答したのは前任者ではなかったようである。というのも、T4委員会は、日本医師会も詳細を同委員会の情報を参考にしていたからである。T4委員会は、単なるパーソナルな任意団体日本甲状腺学会が設立した極パーソナルな会であるにもかかわらず、緊急輸入や日本国中の病院や診療所にチラージンSの供給納品に関わる重大な仕事をするのである。そして、同委員会を立ち上げたのは、あの福島県民健康調査の山下俊一氏であり、ここには日本甲状腺学会を始めとして五学会の意図が無駄なく組み込まれているのである。後に詳細は述べる。)

 その後続く。
「それをうけ、横谷進理事長が他の関連学会(日本内分泌学会、日本内分泌外科学会)の理事長とも相談して、たんに外国よりの輸入窓口になるのではなく、T4製剤の安定供給対策を包括的にとりまとめる組織の設立を提案し、それが5学会理事長(※)に承認されて、レボチロキシンナトリウム安定供給対策委員会(T4委員会)設立となりました(3月18日)」と掲載されている。T4委員会設立は 3月18日のようだ。
 
  
  3月16日、全国保険医連合会から内閣総理大臣と厚生労働大臣宛にその要請があった。その二日後3月18日には、このT4委員会は山下俊一氏のプロジュースで生まれていた。(山下俊一氏とは、Mr.100mmシーベルトで名前を高めた福島県立医科大学の副学長であり、「福島県民健康調査」の座長で様々な論議を巻き起こしたあの教授である。)

  同日3月18日には、日本医師会副会長中川俊雄氏の名前で全国都道府県医師会と社会保険担当理事宛に「チラージンS,チラージンS散、チラージン末の供給状況並びに長期処方の自粛の考慮等について」という(保242)Fというメールが送信されたようである。
 
ここでは当該製剤について、当面は長期処方の自粛を重ねて考慮するなど、必要最小限の適切な処方・調剤に努めてほしい旨の通達を出している。この件において、日本薬剤師会にも協力を要請している旨付記している。
これで、全国都道府県の医師に情報が、周知された。

  その掲載概要は以下の通りである。
「あすか製薬は現在在庫が一ヶ月分の供給しかないこと、「委託会社」による供給を目指しているし、厚生労働省の要請を受け「サンド社」においても国内増産や輸入を検討している」
その書き方とスタンスは、事実に沿って客観的に掲載しているように見える。
(しかし、この通達は、T4委員会の設立と同日行なわれている。ニュースソースはどこなのか……このことが、私には若干引っ掛かった。後に、日本医師会のこの通達も、緊急輸入の経緯と入り混じって、ある意味を持ってくることになる。)

  先の小児内分泌学会の文書に戻れば、「単に外国よりの輸入窓口になるのではなく」と記述されているが、この時点で放射線リスクがなく一番安全性が高かった製剤は、本当は輸入製剤だったはずである。
T4委員会の検討事項に、一度としてあすか製薬の製剤の安全性の論議はなく、ともかく供給を間に合わせることに奔走する姿が見てとれる。
その姿は患者の安全性を向いているのでなく、なぜか、製薬会社の既得権限を守っているかのように患者の私からは見える。
(今年になって分かったことだが、これは事実であった。副作用の件は、厚生労働省安全対策課が所管と聞いていたので電話確認をしたが、緊急輸入の副作用の件では、原発事故初期の経緯は分からくなっていた。)
 

 ともかく、その件で情報開示しかないかとも思ったが、時間が掛かると思った私は、当時の経緯を知っているのはサンド社しかないと思った。
思い切って、今年4月8日コールセンターへ電話をして、事情を話し、然るべき部署を教えてほしい旨依頼した。広報部から連絡を入れるということだった。翌日、広報部T氏から連絡が入った。
ここで私は、緊急輸入については、あすか製薬から直接依頼されたことを確認した。あすか製薬が、サンド社の本社を訪ねてきて、直接、緊急輸入を依頼したというのである。
副作用については、あすかさんにお願いした。それは98%シェアがあり、全国の病院等に納品していて、患者さんの便宜を優先すると、それがいいのではないかということになった。販売者に委託することは、薬事法でも認められている。」

  サンド社が輸入のメドを立てたのが、3月19日だ。この間、日本甲状腺学会、五学会からの要請も電話や文書で受けたとのこと。無論、T4委員会からの要請もあったと聞いた。
すなわち、震災後一週間か8日位の間に、あすか製薬の直接依頼に重ね、学会やT4委員会からの重ねる要請を文書や電話で受け、サンド社は製剤の供給危機に対して、何とか緊急輸入で助力しようとしたようである。
サンド社は、日本における供給の切迫感を受けて、緊急輸入をする決定に動いたという。

  私は、サンド社のT氏に言った。「しかし、緊急輸入は一回で終了してしまった。しかも、一方的にあすか製薬は、4月7日のニュースリリースで、供給が可能になった時点で緊急輸入は中止すると通告までしている。なぜ、私がこのことに拘るかといえば、同社の立地するいわき市には、放射線のリスクもあり、安全性に問題がなかったいとは言えない状況だった。
原発事故後、いわき市には3月15日に、文部科学省のデーターで690000ベクレルもの放射線要素が雑草から検出されていた。セシウムも30300ベクレル出ていた。しかも、この濃い雑草のデーターを同市は、情報公開していない。患者として、こうしたことに危惧を抱いていた。そうしたことを背景に考えると、今回の緊急輸入は、まるで、あすかさんの供給が整うまでの輸入のように見えるが……。」と尋ねた。

  「その通りです。」サンド社のT氏は答えた。既に業者間の取り決めが先にあり、厚生労働省には、それを提案したというのである。
だとすると、この緊急輸入は、厚生労働省経済課が、イニシャティブを取ったということにはならなくなる。(サンド社は、全くあすか製薬の立地するいわき市の濃い放射線値のことは知らなかった。名誉のために付加するが、サンド社広報課T氏は、この件にはコメントする立場ではない旨、私に言った。)
 
 

 
  サンド社に当初の事情を聞いた結果、この緊急輸入は、輸入者がサンド社の名前になっているものの、実質的にはあすか製薬のための輸入処置であったということが証明された。もっと言えば、この輸入は、同社の既得権維持のための救済輸入だったと言えるのである。
厚生労働省が、患者のためにイニシャティブを取った公的なものでなく、放射線の安全性等には頓着されないまま(無視したのか軽視したのか全く知らなかったのか分からないが……。)、あすか製薬の私的な目的のために特化して、緊急輸入は実行されたようなのである。
日本甲状腺学会を主体として五学会全体が、特にT4委員会が、この輸入に深く関わったことは事実のようであった。私は、自分の予測したことが的中したことに驚いた。
 

  ちなみに、2011年10月漢方製剤から放射能が検出されたという読売新聞の記事をキッカケに、日本甲状腺学会のホームページを久しぶりにクリックした時見つけたのが、8月29日付のT4委員会の報告「甲状腺ホルモン薬供給再開への取り組みについて」という第12-4報だった。そこでは、原発事故から六か月供給も見通しが立ってきて、この号で最後とし、それまでの経緯を総括としてまとめてあった。
そこで、あすか製薬についても触れ、「余震もなく、幸いに放射線の影響もなかった」と結論付けていた。

 (しかし、現実には、放射線は自然放射線の範囲とは言え、あすか製薬のいわき工場で検出されたことは事実なのだ。あすか製薬はそう8月22日ニュースリリースで報告しているではないか。何度も述べるが、その製品は、損傷した立体倉庫から引っ張り出したもので、それを、放射線検査をして微量だからとして出荷してしまったと薬の相談室も認めたのである。
 
薬の放射値の基準がないにも関わらず、T4委員会委員長は「放射線の影響もなかった」と言っている。何を根拠に言っているのか。

  8月29日といえば、あすか製薬のニュースリリースが出された後である
それを読んでもいないのだろうか。
現実に放射線の影響はあったではないか。あすか製薬のいわき工場では、在庫品からも自然放射線の範囲だったと言っても、放射線は検出されていた。しかも、それは損傷した倉庫から、取り出した在庫品なのである。そんな状況を知っていて、そんな安全宣言をするのか……知っていて言えば、患者や関係医師団体を欺いたことになる……知らないで言っていたとしたら、余りに、責任感の欠如した発言で供給委員会としての価値がない。)
私は、このコメントに、憤りを超えて白けた。小児内分泌学会の医師というのは、子供の患者の薬を処方する側の人間ではないか。薬の安全性に十全の安全性を道義的にも責任を持つ立場の人間ではないか。
安全性を言うなら、もっと緊急輸入を続ければよかった。少なくとも、あすか製薬のGMPが整うまでは……。
 

  原発事故後3月15日いわき市に一万ベクレルという大量の放射線プルームが通過したことはNHKが報道している。南福島県だけでなく、茨木、群馬、栃木県までに流れたことは事実だと、もはや誰でも知っている。事故当初、雑草にも690000ベクレルの放射線よう素が検出されている。それでも、なおT4委員会は、60万人の甲状腺患者に向かって、2011年の第12-4報を訂正する気はないのだろうか。(これも、後々追求していくつもりだ。)

■なぜT4委員会はあすか製薬との情報共有の窓口となるのか?

 「T4委員会があすか製薬との情報共有の窓口となり、5学会に情報提供を行い、」と書かれているが、なぜ学会が一製薬会社と情報を共有するのか……検討事項に、濃い放射線値が雑草に付着している事実がありながら、一度としてあすか製薬の製剤の安全性の論議はなく、ともかく、同社の供給を間に合わせることに奔走する姿が見てとれる。
しかし、残念なことに、五学会で救済に協力してきたはずのあすか製薬は、損傷した工場から在庫品を取り出し、自己判断で出荷してしまった。
(私の問い合わせに厚生労働省は初耳だと言ったし、冒頭述べたように、販売を担当している武田製薬工業の薬相談室の担当者も一瞬絶句した。本年一月のことである。)

 今年三月あすか製薬の所属する日本製薬工業協会広報課に名前を伏せて一般論で問い合わせると「しかし、黴とか病原菌などについても問題視されるので……。」と焦っている気配はあった。
いわき市に工場が立地している大手製薬会社に聞いても「FDAの査察などもあるので、そんなことをしたら製造できなくなる。」とも言っていた。
同社も同様条件で津波で損傷した。しかし、出荷などしていない。自主管理を徹底しているからである。言い方を変えれば、製造倫理で自主規制をしているからだろう。この企業にそれができて、あすか製薬は、それができなかった理由は何だろう。

  確かに、薬事法56条では「6 異物が混入し、付着しているとか、7 病原微生物、その他疾病の原因になるもの 汚染されたものとある。」と書いてある。これに抵触しないか? 
製薬協からも「カビとか微生物等も問題視される。」との見解もあったが、これは、この薬事法の条文だったのだろう。ましてや、放射線である。いいわけがないだろう。
  


  にもかかわらず、あすか製薬は、損傷した倉庫から在庫品を出荷した。
なぜ、当たり前の自主規制ができなかったのか……それは、とりもなおさず、独占体制で、簡単には潰れないからである。(しかし、市場が動き、あすか製薬の株は急落し、それなりの危機はあった。)
原発後当初690000ベクレルもの放射線ヨウ素が雑草から検出されていたにもかかわらず、損傷した倉庫から在庫品を取り出し出荷してしまったのだ。
(日本甲状腺学会も小児内分泌学会も、こうした事実が分かっても、当初のあすか製薬は安心だとして、今なおチラージンSを甲状腺患者に推奨できるだろうか。あるいは、かく同薬の供給開始に奔走していたのだろうか。)

 
■供給窓口は「国立成育医療研究センター」だった

 
  疑問はまだある。「T4委員会設立と活動について」というニュースリリースを続けて読むと「かつ迅速な対応をするため、T4委員会をT4製剤の安定供給に特化させ、横谷理事長と原田委員が所属する国立成育医療研究センターを事務局とし、震災小児甲状腺PTのリーダーである皆川真規小児内分泌学会理事を委員に加える体制としました。」と書いてある。
ちなみに、独立行政法人国立成育医療研究センターの主務官庁は厚生労働省である。

  そして、小児甲状腺学会の理事長 横谷 進氏は国立独立行政法人成育医療研究センターの生体防御系内科部の部長でT4委員会委員長である。
また、原田正平氏は、2011年11月の改選時から日本甲状腺学会の理事になり小児甲状腺疾患診療委員会の委員長でもある。そして、その肩書きは同国立成育医療センター成育政策科学研究部の研究室長なのだ。
 


 独立行政法人国立成育医療研究センターとは何かと検索してみると、その沿革は陸軍病院から始まったという。そして、戦後、厚生労働省に移管され、国立病院として発足する。

昭和13年   東京第二陸軍病院大蔵臨時分院として開設。

昭和20年6月 東京陸軍第四病院に改編。

昭和20年12月 厚生省に移管、国立大蔵病院として発足。

平成14年3月  国立大蔵病院と国立小児病院を統合し国立成育医療センタ ーを開設。
平成22年4月  独立行政法人となる。

  以上がその沿革だ。この同センターは陸軍病院から始まった。そして、戦後は混乱期のなか、戦争と何も関係なさそうに厚生省に移管されている。こんなところにも戦前の根幹が生き残っている。(あれ程多くの犠牲者を出した戦争――結局、体制を変えることなく、過去の遺産は、平然と旧体制が継承している。)
 

  話を戻すと、原田正平氏の所属している成育政策科学研究部とは、どういうことを研究している所かというと、成育医療や保健に関連する分野の政策研究や社会科学的研究と書いてある。
 
国立成育医療センター自身、「小児ガンの情報センター」を設置しているので、今後、原発事故の情報も集約されていくことだろう。(無論、ここは福島県民管理調査の県外避難民の甲状腺検査実施医療機関である。)
 

  問題視されるのは、国立成育医療センターが事務所と決定されたことは単なる便宜的なものだったかということだ。
その沿革を見ても、元は国立病院だった。そして現在でも、その主務官庁は厚生労働省であることの事実だ。そして、その窓口は、原田正平氏であり、彼は日本甲状腺学会の理事であり小児甲状腺疾患診療委員会の委員長なのだ。そして、同氏こそ、ドイツボロンティアの供給の話を山下氏へ持ち込んだキーパースンなのである。T4委員会の委員の一人でもあり、かつ、小児内分泌学会の評議員でもある。
この国立成育医療センターからあすか製薬の情報が収集され、日本甲状腺学会のホームページに掲載されネットを通じ、全国に発信されることになったのである。
 
 

  さらに問題の文章となるのは「T4委員会があすか製薬との情報共有の窓口となり、5学会に情報提供を行い、現時点で4月中旬とされる供給再開時期まで、T4製剤の不足を起こさないよう、長期処方の自粛及び分割調剤の勧め、新生児、乳幼児などへの優先処方の依頼などを5学会を通して呼びかけています。」という記載部分である。

  ここでもT4委員会は、製薬会社についてはあすか製薬のことしか触れていない。
無論、長期処方の自粛を避け、新生児、乳幼児などへの優先処方をすることは大切な仕事である。しかし、T4委員会は「あすか製薬との情報共有の窓口」であるという一個別企業との情報共有という設定の立て方は、いかがなものであろうか。
たとえ、98%シェアであっても、それは国がトータルに勘案してする仕事で、学会が関与すべきことだろうか。逆な見方をすると、98%シェアとはいえ、なぜそこまであすか製薬に密着しようとするのかという疑義が問われてくる。(穿った見方をすると、それは既得権の誘導ではないかという疑問を持たれる可能性すらあるからだ。)
そして、破綻した論理は必ず、その綻びを現すものである。

■原発事故当初いわき市の一部は屋内退避圏だった

  現に、震災直後、あすか製薬の株は急落した。しかし、4月7日緊急輸入が始まると、同社の株は落ち着くのである。あすか製薬は震災で被災し、同時に原発事故直後の影響も受けた。
同社の立地するいわき市の一部は、原発事故当初、屋内待機圏内に指定されていた。

  あすか製薬は、経営の危機に瀕していたのである。  
たとえ、98%シェアで止むを得ない部分もあるかとも推測するが、T4委員会のあすか製薬にのみ密着するスタンスの取り方は、まるで同社救済委員会のようにさえ見える。
しかし、現実的には、あすか製薬の立地するいわき市には、驚くべき数値の放射線ヨウ素とセシウムが雑草に付着していた。(そのデーターは文部科学省から発信され、ネット上で誰でも閲覧できたはずだった。)

  にもかかわらず、T4委員会は、そうした放射線汚染についての客観的データーを収集していた気配もなく、コメントひとつなく供給対応のみ進めていたように見える。(今年4月に問合わせたサンド社広報部のT氏も、「五学会は供給のことしか言わなかった」と回答してくれた。)
 
 
冒頭にも触れたが、私は自分の飲む薬のこうした放射能汚染に危機感を覚え、厚生労働省にも問い合わせ、日本甲状腺学会経由でT4委員会宛にその驚くべき雑草に付着した放射線についての数値のデーターを添付し、患者としての不安を訴えた。2011年4月16日のことだった。)
厚生労働省に要請しても権限がないからと実現できなかった「放射線の薬の暫定基準」についても、同学会に要請した。(残念なことに一ヶ月経っても返答はなかった。)
 

  両者は貝のごとく沈黙を守り、放射線値に何一つ触れなかった。
それ程驚くべき雑草の数値が、いわき市平字梅本という場所、すなわち、いわき市合同庁舎の近くで検出されていたにもかかわらず……。
(先にも述べたが、この初期に入手した雑草のデーターは、多くの人は知らない。いわき市が掲載しなかったからだ。ゆえに、いわき市は空間線量が低く安心というマインドを人々に振りまくことに成功した。そして、空前の不動産ブームに湧いているという。ヨウ素は8日が半減期だが、セシウム137は、30年しないと半減しない。平字梅本いわき市合同庁舎の雑草が、3月23日最高で30300ベクレルあった。少なくなってきても、地面に流れていっただけである。二年やそこらで半減されない。)

  T4委員会が患者の安全を第一義に考えるならば、あすか製薬との「情報共有窓口」という言い方事態主観的であろう。
同社が放射能汚染リスクが、全くなければそれでいいかもしれない。
しかし、同社の立地するいわき市は、当初、屋内避難待避地区の指定もあった。リスキーの場所だった。現実に大量の放射線プルームも飛んでいった。こうした放射線汚染リスクは単に供給の危機だけでなく、安全性の危機でもあった。
こうした状況下で、本来的意味での患者の安全性を考えれば、供給不足は輸入製剤に絞られるであろう。
  


  もし、不足して間に合わないならば、全国保険医連合会の要請どおり製剤を国が緊急輸入し、あるいは、海外から支援を要請すればよかったはずだ。
あすか製薬の実損は、東京電力に請求してくれればよかったのだ。(同社だって、被害者なのだから……。)
しかし、危機に瀕していたあすか製薬は、なりふり構わず既得権獲得に走った。誰も、損壊した倉庫から在庫品を取り出し出荷していたことは知らなかった。私が知らせるまで…。

  「自然放射線位だったから出した」とあすか製薬は言うが、製薬会社がそれをしてよいという根拠はない。
なぜなら、FDAの国際基準に則り、工場が設置されているから安全なのだろう。しかし、それが損傷している次元で、安全性の論理は崩れる。
(ここまでのことをして同社は、何を守りたかったのか……海外輸入製剤の流入によって、現在の既得権を失うことの方が怖れたのだろうか。現実に株は急落し、存続の危機にいたからだろうか。)
なにはともあれ、同社が、患者の信頼を裏切ったことは事実だ。しかし、もっと恐ろしいことは、私に指摘されるまで、こうした事実を版売している武田製薬も知らなかったし、関係官庁も知らなかったということだ。
 
  

  それにしても、なぜ、T4委員会は、あすか製薬との情報共有に固執するのか。なぜ汚染地に近くのリスクがある可能性もある同社とばかり情報を共有する窓口とならなければならないのだろう。
しかも、「五学会に情報提供を行い」とあるが、これもフェアでない。なぜなら、全国の医師は五学会に所属していない医師の方が多い。安全性の意味から考えれば、患者の利益にもなっていない。
任意団体の学会が患者の安全性を放棄したまま、なぜ、一製薬会社の既得権のために東奔西走するのか……当初は、それが謎だった。
しかし、こうした経緯で分かったことは、患者の安全性等、学会も関係官庁も頭の片隅にも入っていないということである。

  「単に外国よりの輸入窓口になるのではなく、T4製剤の安定供給対策を包括的にとりまとめる組織の設立を提案し、それが五学会理事長に承認されてT4委員会設立となった」と記述しているが、これも、なぜ、五学会でこんな安全と命に関わる大切な事案を決定してしまおうとするのか、やはり分からない。
ちなみに「関連学術5団体:日本内分泌学会(森 昌朋理事長)、日本甲状腺学会(山下俊一理事長)、日本甲状腺外科学会(高見 博理事長)、日本内分泌外科学会(高見 博理事長)、日本小児内分泌学会(横谷 進理事長)」と記載されている。


  

■五学会は親戚学会

  気になるのは、この決定を承認した関連学術五団体は、実に役員も兼任しているなど密着度が高く透明性に欠けるように見える。
例えば、現在「福島県民健康調査」の責任者の鈴木眞一氏は、日本甲状腺学会の監事も務めている。
原発事故時、日本内分泌学会理事長は群馬大学院医系研究科の教授森昌朋氏だったが、退任した後、同学会の新体制でも森氏は理事を勤めている。さらに、森氏は、日本甲状腺学会でも理事を務め倫理、渉外部門を担っている。(社団法人日本内分泌学会は日本医学会に登録され、文部科学省に認可されている学会である。)

  森氏は、原発事故じ内分泌学会理事長だったと言ったが、山下俊一氏自身も「森氏から理事長職を拝命した。」とその挨拶文の中に書いている人物である。山下氏自身も、この日本内分泌学会の理事でもある。
T4委員会の委員長で小児内分泌学会理事長の横谷進氏日本内分泌学会の評議員でもある。(また、日本甲状腺学会は日本内分泌学会の分科会としてリンクされている。)
原発事故当時、日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会の両理事長だった高見氏は、現在は退任したが、名誉顧問として在籍している。
両学会の創設者であるとされる高見氏は、日本甲状腺学会のプレミアム記念号の随筆集に寄稿もしている。
 

 現在、日本内分泌外科学会の理事長は鈴木眞一となった。事務局も福島県立医科大学内である。
そして、日本甲状腺外科学会の理事長も平成23年10月8日から神の手を持つと言われる甲状腺ガン手術のパイオニアである日本医科大学第2外科出身の清水一雄氏に変わった。
この二学会は共同で学術誌を編纂したようである。(この学術雑誌編集委員長は、先に紹介した名誉会員である高見 博氏である。高見氏は甲状腺腫瘍診断ガイドラインの作成委員会の顧問に名前を連ねている。
鈴木眞一氏もこの委員会の委員でもある。(内分泌・甲状腺外科専門医制度試験問題作成委員会の委員長は、日本甲状腺外科学会の理事長清水一雄氏である。清水氏は資格認定委員会の委員でもある。)
このように2学会は密接な関係にあるようだ。
 

  日本内分泌外科学会では、監事は清水氏。そして、日本甲状腺外科学会では、少し前までは鈴木氏が理事をしていた。現在の監事は伊藤公一氏岡本高宏氏である。この両者は日本内分泌外科学会でも理事である。
このように、同じメンバーによる役員人事、また各委員会並びに学会雑誌の共有していて、ほとんど双生児学会のように見える。

  第44回日本甲状腺外科学会評議員会議事録においては(2011年10月6日開催された)「福島県民健康管理調査について鈴木眞一理事より報告され、学会として支援していくことが確認された。」と記載されている。理事であった鈴木氏から、「福島県民健康管理調査」の協力要請が、こんなに早い段階から進行していたのだ。
すなわち、日本甲状腺外科学会において、学会として支援することが公に確認されていた。ここから見えてくる両学会の垣根の低さが垣間見える事象である。
 

  先の日本甲状腺学会の話題に戻れば、日本甲状腺外科学会理事長清水氏も日本甲状腺学会の理事をしている。日本内分泌外科学会の理事長になった鈴木氏も日本甲状腺学会の監事である。
このように日本甲状腺学会には、外科系内分泌医、外科系甲状腺医、小児科系内分泌医、甲状腺病理科医など様々な分野の医師が甲状腺という臓器を巡って会員として所属している。すなわち、様々な分野の医師が所属していることから、結論が集約しやすい学会であるのかもしれない。
だとしても、五学会において重要ポストを巡り、同メンバーで固めているのは偶然だろうか。(その関係性の密度は、傍目からは異様に見えるのだが、学会というのは、そんなものなのだろうか。こうした学会の事情に口を挟む程、私個人が、事情に精通している訳でもない。それぞれ、この分野の第一人者であろう。)
けれど、重要案件の決定が、一学会の個人レベルでなし崩しに進んでいくというならば、問題となろう。もし、恣意的行動があれば、もっと許せない。
少なくとも、原発事故後の緊急輸入については、あすか製薬がサンド社を訪ねてきて緊急輸入を依頼した……そして五学会T4委員会の度重なる要請で決断した……それから、厚生労働省に提案したと言っていた。
すなわち、この緊急輸入は、患者にとっては安全性の裏付けのない、実に不透明で、不本意なものであったかということが分かった。(今年4月にサンド社へ確認したことである。)
 

  原発事故という前代未聞な事故が発生した。そして、あすか製薬のチラージンの供給が危ないという事案が生じた。それで、最初、何とか委託会社等も含めて対策を取るようにと厚生労働省経済課の前任者は、指導したと言っているそうだ。しかし、絶対的供給量が不足している……そこでサンド社は外資系である。何とかサンド社から緊急輸入できないだろうかということになり、サンド社に要請した……と厚生労働省経済課の前任者は言っているようだが、サンド社の話と若干経緯が食い違っているようである。
原発事故後一週間位の間で、あすか製薬が、緊急輸入の件をサンド社に依頼するために訪ねてきたという。だったら、厚生労働省の要請は、どのあたりにあったのだろう。あるいは、流通が止まることを懸念した厚生労働省が、あすか製薬にサンド社を訪問するよう指導したとでもいうのだろうか。
仮にこの説を採用したとして、原発事故の影響が大きいあすか製薬に、そこまで肩入れして何の利益があるのか。
やはり、ここでは、あすか製薬が自分の既得権維持のために、放射線測定もする前に行動したという見方が妥当だろう。(そして、それをT4委員会を筆頭に五学会が後押しした。)
ともかく、この緊急輸入は、あすか製薬の利しか考慮されていないパーソナルなものであった。そして、患者の利は、無視されていた。安全性という意味においてである。

 
 
  原発事故は福島県で起こった。少くとも、放射線データー把握をした上で、対応の舵取りをするべきだった。
 
当然ながら、患者は、あすか製薬の株の安定のため生きている訳ではない。
被爆者たちと同様、患者にも人権が尊重されなければならないだろう。
本来、一製薬会社の供給問題にまで、学会が首を突っ込むべきでなかったろう。たとえ、混乱事態であれ、緊急事態であれ、原発事故による安全性という問題が関わっている以上、そのリスクがクリアにされない限り、一製薬会社の既得権を優先するかもしれない行動は慎むべきであったろう。
学会の提唱する供給優先は、あすか製薬のパーソナルな供給であり、本来的意味の患者のための供給優先ではない。

  もし、安全性を考えたら、緊急輸入は、もう少し持続する必要があったのではないか。
あすか製薬が操業を開始し、放射線を測定したのは3月26日である。(サンド社の緊急輸入のメドがたったのは、3月19日だった。)
ということは、放射線測定もされない前に、さっさと緊急輸入が決定されていたという事実が、浮かびあがってくる。このことは、当時、いかに患者の安全性がないがしろにされたかという証明でもある。
 
そのまま、もう少しサンド社に緊急輸入を延長してもらうとかしてもよかった。(あすか製薬の安全性が未知数だったからである。)
政府が責任を持って、特例を作って「全国保険医連合会」の要請どおり海外に支援を要請してもよかったはずである。

 緊急輸入はあすか製薬の既得権維持のためのパーソナルなものでしかなかった。それを支えたT4委員会の情報は、日本医師会、日本薬剤師会、様々な医療関係者に、少なからず影響を与えた。
けれど、この設置経緯が、一任意学会の山下俊一氏が提案したプロジェクトチームから発足し、あすか製薬との情報窓口として設定された機関だと多くの関係者は知っていただろうか。
 


  おそらく、関係官庁厚生労働省経済課が、あくまで指揮を取り、決定された経緯なのだろうと思っていたはずだ。
 
私は、今年2月原発事故直後一番に政府に緊急輸入の要請をしてくれた当の「全国保険医連合会」地域医療対策課のI氏に連絡を入れてみて、その前後関係のことを聞いた。
少なくとも、自分たちの提案が、日本医師会の通達等で実現できている、吸収されていると考えていたようであった。(同連合会の要請に対し、特に政府から何の返答もなかったようである。)
こうして、せっかく、政府に透明な緊急輸入を働きかけてくれた「全国保険医連合会」の要請は、初期の段階から完全に無視され、公的な緊急輸入は、一製薬会社の個人的既得権維持のための私的な輸入となってしまった。

  このように、学会の応援団の活躍で、一製薬会社の既得権レベルの経済的次元の緊急輸入は、進行し、実施され、その製薬会社の供給達成で一方的に終了した。(ちなみに、今年4月に入って、日本医師会の医療安全課に連絡を入れたが、こうした事情を担当のI氏も知らなかったし、日本民医連の国民運動部のI氏も知らなかった。)

■日本甲状腺学会は任意団体

  
  緊急事態で製薬の供給が間に合わない危機に際して、重要な事案に五学会及びT4委員会が関与し、あすか製薬の既得権益を守るべく動いたことは事実なようである。(工場も倉庫も損傷しているあすか製薬についても、厚生労働省は、放射線の汚染リスクのある地域の情報収集もしていなかったようである。)

  あすか製薬がサンド社に緊急輸入を依頼したのも、自社の供給が間に合うまでの暫定処置であり、緊急輸入はあすか製薬の都合でいつでも打ち切れるような仕組みになっていた。
このことは、とりもなおさず、この緊急輸入が、自社の経済的都合しか考えていなかったものであったかを証明するものであろう。そして、供給を声高に叫び、その体制をプロジュースし、誘導したのは日本甲状腺学会であった。
  


  日本甲状腺学会京都にその本部がある。1958年に設立されたとあるが、その歴史的経緯は掲載されていない。そして、ここは日本内分泌学会と深く関係を持つと書いてはあり、当学会も京都に本部がある。
こちらは創立1925年京都帝国大学医学部の辻寛治博士が機関誌を創刊したところから始まったようだ。(甲状腺も内分泌の疾患の一部とすれば、こちらの方が先発なのだろう。)
小児内分泌学会も所在地は京都である。(しかし、原発事故というリスクに立地する製薬会社の安全性について、この学会も詳細なコメントはなかったと記憶している。)
 

  しかし、日本甲状腺学会が任意団体であることは、一般的には余り知られていない。初代理事長紫芝良昌氏が50周年記念随筆集に寄稿している文章のなかで触れている。
日本甲状腺学会は独立した事務所を持ち、会計も独立させたが、機関紙の発行はなく、日本医学会に登録していないため正式学会として認められていない。また外科医も所属していることから日本内分泌学会の分科会としても加盟できていない課題も担っている。(会費6000円を支払えば、その理念に賛同する人なら、誰でも入会できる任意団体であると日本甲状腺学会事務局も認めた。今年電話をして確認した。)
  

  別に任意団体だから云々している訳ではない。(けれど、私が住む広島県では日本甲状腺学会への所属会員は、たった四名である。)
先の長紫氏によれば、「認定専門医の「認定」についても、認定制機構に参加できる学会には日本医学会に加盟登録していることが必要であり、これら機構を通じて文部科学省大臣に届出を行って受理された場合に、「広告を行うことができる」と定められているそうである。
日本医学会にも加盟しておらず、認定機構にも加盟していない現状では、不特定多数に「広告」どうなのかというわけである。

  日本甲状腺学会は依然として任意団体に過ぎない訳であり、甲状腺専門医という言い方事態も正式には認可されているわけではないのである。(未だに機関紙が発行されていないし日本医学会への入会もしていないので、文部科学省から正式に認可された団体ではない。すなわち、今でも任意団体であることも今年に入り、事務局に確認した。)

  私は先にも言ったように任意団体だから云々しているわけではない。
問題は、そうした任意団体である学会が、患者の権利と受益を無視し、一製薬会社の既存の権益を守るべく緊急輸入製剤の供給問題を要請したりすることについて問題視しているのだ
あすか製薬に何の放射線懸念がなければ、その事は緊急時なので容認できる余地はあろう。しかし、少なくとも、いわき市は、当初一部屋内退避圏であった。文部科学省でも濃い数値のモニタリングデーターを報告していた。そういうリスクがある地域だったのである。)
一学会に、そうした権限が果たしてあるのかと疑問を提しているのである。

  言うまでもなく、患者は学会に所属する物ではない。ましてや、製薬会社に所属している物でもない。人権と尊厳を持ち、安全な薬を飲む権利があるのだ。
もし、日本甲状腺学会にそういう自覚がなければ、患者の人権を蹂躙している迷惑な存在となる。

  いわき市の高い放射線データー値を知っていて、なお、緊急輸入要請に介入していたとしたら、それは犯罪的ですらある。(五学会は、そのことをしっかり認識すべきである。)これは他の四団体にも言える。
社団法人格の日本内分泌学会を除いて他の四学会は、日本医学会の登録もなく、正式に文部科学省の認可を受けた学会ではない。すなわち、任意団体でしかない。
 


  もとより、医療において甲状腺内分泌関係はスキマ産業だと言われてきたと聞く。こんな福島原発事故が起きなければ、医療の影に存在していた地味な分野だったのかもしれない。
そういう背景を得て、多くの製薬会社が手を付けなかったホルモン補填材を、あすか製薬が98%も独占できていたのかもしれない。(これを飲まないと生きられない大切な薬にも拘らず、独占シェアを長年許してきた。)
ところが、予期せぬ原発事故によって、突然、スポットライトが甲状腺関係学会に当たってしまった。身内関係で持ってきたような五団体だが、これから放射線による子供の甲状腺ガンが増大する可能性があるなか、この五団体の動きは、随時注視されることだろう。
であれば、今までの身内感覚では許されないスタンスを取らなければならないはずであろう。従って、今後は隠蔽も許されず、一つひとつの決定事項にも透明性が要求されることになろう。

つづく

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